ひと・人@広場 Archive

12:オーストラリア発、ママの暮らしを楽にする!/マーシャン・祥子さん

m-sachiko-1今回は、オーストラリア、サンシャインコースト在住のマーシャン・祥子さんです。

【やほい】
実は祥子さんは▼2009年にもご登場いただいていますので今回が2度目となります。前回伺ったお話はぶっ飛び過ぎていてその行動力にかなり驚きましたが、あれから7年が過ぎ、今また祥子さんを取り巻く環境が大きく変ったようですね。さて、まずはその後の変化や、現在の活動についてざっとお話しいただけますか?

【祥子】
もう7年ですか、びっくりです。あれから映画が3本くらい作れそうなほどいろいろありましたよ。

まず、出張料理や執筆仕事が軌道に乗ってきた2010年に息子を出産しました。仕事が大好きだったので、無謀にも産後2ヶ月で仕事に復帰。説明するまでもなく、てんてこまいで、頑張りすぎた私は産後うつになりました。

【やほい】
“頑張りすぎて”うつになったところが祥子さんらしいですね。で、どうされたのですか?

【祥子】
そこで、子育てをしていくということは、今までのようにパワーで押し切るだけじゃだめなんだなということを学び、仕事と育児、そして心と体のバランスを保つように食生活やライフスタイルを見直すようになりました。

1年の休養をとり、仕事にも復帰。バランス良く、をテーマに7割くらいの力で生きることを学んできた頃、2013年に娘が生まれました。

【やほい】
覚えています。もうすぐ第二子ご出産と聞いていましたので、「子育て関連の原稿がお願いできるな」と思っていました。確か、あの頃、一度お願いしたような記憶があります。そしたら、生まれた娘さんのことでたいへんでそれどころではないとお返事もらいとっても心配になりました。

【祥子】
出産時の事故で酸素が足りず、娘は脳性麻痺という障害を負ってしまったんです。歩いたり学習したりすることに障害が出るかもしれないと。これは人生最大の試練でした。告知をされた時というより、娘が眠りから覚めなくなってしまった時、自分の中での価値観がガラッと変わったような感じでしたね。もう戻ることができないような暗闇のどん底の中に放り投げられて、母としての無力さとか命の大切さ、あたりまえの幸せの大切さに気づきました。

【やほい】
我が子の危機に直面したときの苦しみは並々ならぬことでしたでしょう。母としての気持ちの動揺、代わってやれない無力感などたいへんお辛い時間を過ごされていたのですね。

【祥子】
生後退院してすぐ、リハビリを始めたんですが、そこからずっと、毎週いくつもアポをこなす療育生活です。そして次第に、どう健常児に近づけるか、ではなく、どうしたら娘がありのままで輝けるんだろう、娘だけでなく息子も、周りの子も、とにかく皆がありのままで輝ける社会で生きていきたいと思うようになったんですね。

【やほい】
「母は強し!」泣いている場合じゃないし……というわけですね。それで?

hito_13_sachiko【祥子】
この頃、娘のセラピーのために、住み慣れたシドニーを離れ、クイーンズランド州のサンシャインコーストという美しい片田舎に引っ越しました。

そんな中でも、仕事復帰への想いが常にあり、娘が1歳、2歳という区切りで復帰を試みたんですが、どうもうまくいかないんです。あんなに大好きだったはずの仕事がストレスにしかならない。7割の力でやろうとしても不安とか焦りで押しつぶされそうになる。

以前は料理で人を幸せにすることが生きがいだったのに、パーティーや記念日なんかですでにハッピーな人をさらにハッピーにすることに温度差を感じるようにもなっていました。そして2回、仕事復帰に失敗しました。

【やほい】
そこもよくわかります。自分が辛いときに人の幸せを目の当りにすれば焦りも生まれるでしょうし、居心地が悪いですよね。それはとても自然なことだと思います。

【祥子】
この2回の挫折で、私は今二児の母となり、障害と向き合う私には何か違う仕事がむいているんじゃないかと思うようになったんですね。なんていうか、幸せな人をもっと幸せにするんじゃなくて、私は人の健康に携わったり、辛い人を幸せな方向に持っていく仕事がしたいんだなと。

ちょうど、娘が生まれてから、娘の可能性を十分に引き出し、ベストのコンディションを保つために、脳に良い食事とかを研究するようになっていたんです。そういうことがリンクして、オーストラリアの国家認定のフードコーチという資格を取る勉強を始めました。ホリスティックな栄養学はもともと私が管理栄養士の資格を取るために日本で勉強したものとはまた違い、非常に納得できるものでした。

二人の子育てと療育の合間の勉強はとても息抜きになりました。そして去年資格が取れて、フードコーチとして、心と体のバランスを整える仕事を始めたんです。

【やほい】
その資格とはどんな資格なのですか?
foodcoaching【祥子】
栄養士とライフコーチを合わせたような資格です。今欧米ではヘルスコーチというのが爆発的に人気で、パーソナルトレーナーをつけるように、自分の健康管理に対してコーチをつけるんですね。フードコーチもほぼヘルスコーチと一緒ですが、お客さんの立てる目標、例えば病気の症状をコントロールしたいとか、体重を落としたいとか、健康にモチベーションを保ちたいとかに対して、こうしなさいというのではなく、どうしたらそれを達成できるのか一緒に歩んでくれる人という感じです。食生活やライフスタイルを見直して、どうしたらその人自身が無理なく理想に近づいていけるかを一緒に考えていきます。食とか体とか症状に偏ってフォーカスするのではなくて、ホリスティックにその人がどうしたらもっとバランスよく健康にいられるかを提案し、サポートしていくんです。

私自身は去年の12月から、それまではローカル対象でやっていたビジネスを日本人向けに変え、そして子育て奮闘中のママに絞って子育てを楽にする食育情報の発信や、ワークショップ、フードコーチング、執筆、レシピ提供などを展開しています。日本人向けなので場所を定めず、スカイプやメールを使ってグローバルにやっています。

【やほい】
子育てがすっかり終わっているわたしも祥子さんから配信されるメルマガを楽しみに拝読しています。食に関する情報は生きている限りたいせつです。食を通して心と体の健康を考え、ライフスタイルを見直しと、いい影響を与える活動をされているなと感じています。

お話を伺い、祥子さんは苦しいとき、辛いときも自分を冷静に見極める力があるように思います。そして、自分に何ができるのか?何がしたいのか、そのためにどんなアクションを起こせばいいのか?と常に考えて行動が起こせるところがすばらしいです。

さてここで、祥子さんの活動に興味のある方に具体的な情報をいただけますか?

mail_sachiko【祥子】
月に2回、忙しいママの笑顔のための食育メール講座というのを配信しています。ママ目線で噛み砕いた子育てを楽にしていく食育情報や時短でずぼらなのに体に優しいレシピをてんこ盛りにしています。無料登録は文末のウエブサイトからできます。

不定期ですが、各地で食育ワークショップも行っています。今後、オーストラリアだけでなく日本や海外でも展開していきたいですね。

foodtherapyまた6月13日から8週間で子育てを楽にするFood Therapyというオンラインプログラムを始めます。

子育てにストレスを抱えるママを楽にしてあげたいんですよね私。

やっぱり、産後うつとか、娘の障害とか、私の育児にはいつも大きなチャレンジが待っていて、そこで学ぶことは計り知れないんです。同時にそういう痛みもわかるので、ついつい頑張らなきゃってしてしまうママの肩の荷を降ろしてあげたい。

そうすれば、もっと穏やかな時間を子供とすごせて、笑顔とゆとりが生まれますよね。ママがそうなら、子供って本当にありのままでのびのび育ってくれると思うんです。

このプログラムがまたすごいんですけど、オーストラリア在住の8人の心と体の専門家(日本人)が集結して食やライフスタイルを見直すことで子育てを楽にしていこうというものなんです。オンラインなのでどこからでも参加できて、しかも同じ悩みを抱えるママたちと同時進行なのでフォーラムで助け合うことができます。

穏やかな子供を育てる食育はもちろんのこと、一生困らない献立の軸の作り方、ずぼらレシピの動画、ヨガの動画、自然療法、アートやアロマを取り入れた育児の知恵、マッサージの動画などてんこ盛り。

6月からは初めての試みになるんですけど、これをたくさんの人に広めていきたいと思っています。このプログラムを通じて世界中のママとつながれたらいいですね。

【やほい】
「世界じゅうのママがつながる」ってすばらしい!まるで「海外在住メディア広場」のようですね。(笑)

【祥子】
このプログラムを元にしたプライベートのフードコーチングも承っています。対面より、スカイプが人気ですね。やっぱり、アポってママにとってストレスですから、子供がいない間とか寝た後とかにパジャマでもできる、夫婦参加オッケーというのがウリです(笑)

執筆、レシピ提供・講演の依頼もいつでも受け付けています。食に限らず、子育て、マインド面、海外生活などのトピックでも承っています。

◆ウエブサイトはhttp://holisicfoodjourney.com
◆問い合わせはこちら
◆ブログはhttp://ameblo.jp/oceansoul

【やほい】
世界じゅうのママが笑顔になれる活動、楽しみです。元気が出るお話ありがとうございました。

11:世界を舞台にWord Connectionを立ち上げ/マイアット・かおりさん

 

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今回ご登場いただくのは、フランス、バスク地方を拠点にご活躍のマイアットかおりさんです。かおりさんは、海外在住メディア広場とはとっても長いお付き合いで、広場の中ではかなり古株さんです。また、広場登録ライターの寄稿で成り立つ媒体、「地球はとっても丸い」でも、長い間、編集スタッフとして、ご尽力下さった方でもあります。

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10:『免税販売・ショッピングの手引き』発売!/伊藤雅雄さん

menzei_book今回は、英国、ロンドン在住の伊藤雅雄さんが、
『免税販売・ショッピングの手引き』を出版されたときいてお話を伺いました。

『免税販売・ショッピングの手引き インバウンドへのアプローチ』
▼ facebook 「免税販売 ショッピングの手引き」

 ~・~・~・~・~ ~・~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~

【やほい】このたびは『免税販売・ショッピングの手引き』のご出版おめでとうございます。

 タイトルから“免税”という言葉が飛び込んできますが、具体的にはどのような方たちを対象にした手引き書なのでしょうか?また、この本の出版に至った経緯を簡単に教えていただけますか。

【いとう】日本にはもともと外国人や永住者に対する消費税の免税措置、という手続きが存在していたんですが、「そういうことができる」というPRがほとんどされておらず、積極的に免税制度を利用しようという旅行者は非常に少なかったのです。ところが、昨年秋に日本政府が「消耗品を含む、全ての物品に対して消費税を免税とする」という新しいスキームを打ち出しました。その結果、たまたま円安で増加傾向にあった訪日客が競って免税ショッピングを楽しむようになりました。とくに、新たな措置により化粧品や薬品が免税で買えるようになったことは、「良質な日本製」を欲する中華系の人々に大きな後押しとなったようです。

爆買い用に積まれたポッキー?しかし、新しいスキームが導入されたのに、PRの方法が悪いのか、訪日ツアー参加者以外にはほとんど免税ショッピングのルールが知れ渡っていません。まして、在外邦人にこういった情報が伝わることはなく、そういう事実を知る海外在住日本人はほぼ皆無です。そこで、まずは国外に住む100万人以上の日本人に「免税でお得なショッピングができること」を知らせようと、書籍の刊行に踏み切りました。

【やほい】なるほどです。日本で買い物することで「免税」の恩恵が受けられるのは、海外在住者なわけですから、日本の内側の方たちがそのような情報を日本語で、在外邦人に向けて伝えたいと考える人はそうはいないかもしれません。まさに、在外邦人だからこその目の付けどころといえますね。

 わたしもネットで調べてみたのですが、海外在住者への免税措置に関する情報は多少はでてきますが、わかりやすく説明してくれているものは少ないように思います。これも、対象が「海外居住者」と、限られた方たちだからでしょうか? とはいうものの、グローバル時代の昨今ですので、その数はすでに膨大ですよね。では、具体的にどんな人々が免税で買い物できるのか教えて下さい。

【いとう】細かい規定があるにはありますが、大まかに言うと、日本に観光などで「短期滞在」で訪れる外国人と、海外に2年以上在住する(予定の人も含む)日本人が免税ショッピングの対象となります。どこかの国の永住権を持っているかどうか、といった細かい条件はなく、駐在員や留学生でも外国に住んでさえすれば、要件は満たします

実際の手続きでは、外国での居住証明や出国航空券を見せるといった要求はなく、自己申告で済んでしまうのが現状ですね。

【やほい】空港にある免税店とはどうちがうのでしょうか?

【いとう】これは文章を書いている最中にも、どう表現したら分かりやすいか結構悩みました。というのは、このスキームで免税になるのは「消費税」のみ。一方、空港にある「免税店」では酒税やたばこ税、関税などが免税されて安く売っている訳です。英語では前者は「TAX FREE」、後者は「DUTY FREE」と分けられているのですが、日本語では「免税」という単語しかないんです。いちいち消費税免税店、なんて呼ぶ人はいませんし。用語がしっかりしていないから、PRが進まないのかもしれませんね。

【やほい】 “税”とひとくちにいっても、いろんな税があるわけですからね。それでは、どんなものが免税になるのでしょうか。

【いとう】恐ろしいことに、売っているもの全部について消費税が免税となります。買い物額の下限があって、食べ物や化粧品、薬品といった「消耗品」は1つのお店で5,000円以上、「耐久消費財」は同じく10,001円以上にならないと免税手続きをしてもらえません。

なお、「消耗品」は専用の密封袋に入れて渡され、出国まで開けてはいけないことになっています。また、自分がいくら外国に住んでいるからといって、スーパーのお弁当やアイスクリーム、生の肉類など、空港からの持ち出しまでに賞味期限が切れそうなものを免税で買うことはできません。もっとも、出国直前に大量の魚介を買って北海道から出国する、という強者がいるそうですけど。

【やほい】(笑)それはすごい! 免税でお買い物したい場合、どんなところに行けば免税で買えますか?

【いとう】制作作業中に最も多かった質問の1つが「どこの店で免税手続きを受け付けているのか?」というものでした。今回の制作中に、全国にある消費税免税店は13,000店を突破。あっという間に2万店くらいまで増えるかもしれません。調べたところでは、大手スーパーチェーンのイトーヨーカドーとイオンはほぼ全店で免税手続きを受けてくれますから、ご実家が辺鄙な場所にある方でも免税ショッピングが楽しめますよ。

【やほい】諸外国の免税手続きと異なる点はありますか?

【いとう】例えば、欧州から免税品を持ち出す際は空港の税関カウンターに買った商品を見せて、書類にハンコをもらわねばなりません。ところがこの手続きをするのがまた一苦労。なぜなら、欧州にも中国からの「爆買い団」が大勢行っていて、税関は長蛇の列なんです。

日本ではこの税関検査を大幅に簡素化。お店でもらった書類を提出するだけでOKとし、商品を見せる手続きを省略しちゃいました。つまり本当に商品が輸出されたかどうかを税関吏が目で見てチェックしていないのです。こんなんでいいのか、と思ってしまいますが。

【やほい】まだまだ、この制度の各国語による情報整備が待たれるところかもしれませんね。まさに大量購入される人々には、是非とも教えてあげたい内容です。実際のところ、免税ショッピングの現状はどうなのでしょうか?

menzei_service_counter 【いとう】日本で盛んに報道されている「爆買いの中国人」の標的(笑)のひとつは、ドラッグストアなんですが、ツーリストが集まる都心のお店を除いては、手続きに慣れていません。ですから、先にお店の人に「免税手続きをお願いする」という心づもりを伝えてから買い物を始めた方がよさそうです。そうすると慌てて店長を呼びに行ったりしますので。一方、スーパーや家電量販店の場合はそれなりに窓口のスタッフが教育を受けているようで、わりとすんなりと手続きしてくれますね。

【やほい】小売店をはじめ、ビジネスを展開する側からすると、海外から訪れる買い物客に対して、この制度の情報をわかりやすく説明し、簡単に免税で買い物をできるように整備することは、大きな販促に繋がるように思います。

【いとう】今年4月から、複数のテナントが入居するモールやショッピング街でも「合算での免税手続き」を認めるようにルールが変更されました。それ以前は、1つの建物での買い物ならまとめて免税手続きできる場所は百貨店だけでしたからずいぶんシンプルになりました。

さらに、何らかの認証方法を用いて、通信販売でも免税によるショッピングができると時間のない一時帰国者にはとても便利なんですけど、こちらの実現は難しいと思います。

【やほい】在外邦人としては、免税ショッピングに役立つ情報がもっと活発に行き来するようになってくれるいいと思うのですが……

【いとう】最初に述べたように、我々のような国外に住む日本人は100万人以上いますが、華僑のように明確な区画にまとまって住む習慣がないので、「在外邦人向けのお得な情報」をまんべんなく伝えるのがなかなか難しいように思います。とはいえ、あちこちの街には日本語のフリーペーパーがたくさん発行されていますから、そういったソースなどを使って「一時帰国時の便利なTIPS」を告知する方法はないかと思案中です。よく考えるとわたしたちのような在外組が日本に帰ると「インバウンド客」なんですが、観光庁などが取っている統計にはまったく上がって来ません。「在外邦人向けの格安プラン」をつくってくれるホテルや旅館、スーパーとかが出て来たらおもしろいですけどね。

【やほい】たしかにそうですね。海外で暮らすわたしたちのほとんどは帰郷しますしね。

言葉ができないからと、外国人への対応が後回しになっている“フツーの日本人”の方たちにとっては、隠れたビジネスチャンスのヒントがみつけられる一冊かもしれません。

 英国にいながら、日本のインバウンド事業について常に気に留めているいとうさん。現在は「外国人の目から見た日本のインバウンド旅行」に関する書籍も準備中だそうです。

「写真提供:イオン」

9:ソーシャルメディアを仕事に活かす!/ピアレス・ゆかりさん

今回はカナダ、バンクーバー島にある美しい町、ビクトリアから、ピアレス・ゆかりさんにお話を伺います。ゆかりさんはソーシャルメディアを積極的に利用して、いろんな可能性に挑戦中です。

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8 ドイツ発環境問題の取り組み、提言を発信する/田口理穂さん

今回の「ひと・人@広場」はこのたび『市民がつくった電力会社~ドイツ、シェーナウの草の根エネルギー革命』を書かれた、ドイツ・ハノーファー在住の田口理穂さんです。

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7:『「お手本の国」のウソ』執筆者が勢ぞろい!

今回は、新書で今話題の本「お手本の国」のウソ (新潮新書)の著者の皆さんにお集まりいただきました。このコーナー始まって以来、おおぜいの方々が一度に参加ということで、どんなお話が伺えるかとても楽しみです。七名の著者のうち、五名が「海外在住メディア広場」の登録ライターです。

この本では、日本人が理想とする「お手本の国」で、そのことがらが本当にうまくいっているのか、各国在住のライターが検証しています。

  • ドイツの戦争責任問題
  • フィンランドの教育法
  • イギリスの二大政党制
  • ニュージーランドの自然保護
  • フランスの少子化対策
  • アメリカの陪審制
  • ギリシャの観光政策

伊藤雅雄さん 靴家さちこさん 内田泉さん 有馬めぐむさん 田口理穂さん

伊万里穂子さん 中島さおりさん
(ゲスト参加ありがとうございます)

参加者:田口理穂さん(ドイツ)有馬めぐむさん(ギリシャ)靴家さちこ(フィンランド)伊藤雅雄さん(英国)内田泉さん(ニュージーランド)中島さおりさん(フランス)伊万里穂子さん(米国)

【やほい】
まずは皆さま発刊&快調な売れ行きともにおめでとうございます。ちまたから聞こえてくる数々の書評は興味深いものが多いですし、なによりタイトルを伺った瞬間から「読みたい!」と思いましたので、本が届いたときにはわくわくしました。

各国の「日本が見習うべき」というお手本の国のイメージは、実は、日本のメディアにより、いつのまにか創り上げられた幻想というか、思い込みといった側面もあるということが、この本の出現により示されたと思います。随所でうなずきました。

では、せっかくの機会なので私の聞きたいことを質問させていただきますね。

まず、皆さんに伺いたいのですが、この本が出る前までは、今お住みの国々で、日本で伝えられているイメージとのギャップを、常々感じていたのでしょうか?また、そのギャップにイライラすることなどもあったのでしょうか?

戦争責任にカタはついていると思われがちなドイツの理穂さんいかがですか?

【田口(ドイツ)】
日本にいるときは、ドイツは街がきれいで人々はきちんとしているというイメージがありました。しかしドイツに来てみると、ごみは日本より落ちているし(ただし頻繁に掃除をしているのあまり目立たない)、人と約束しても10分くらいの遅れは当たり前、中には30分遅れてきても謝りさえしないなど、日本の感覚と違うことがわかりました。「勤勉なドイツ人」というのもかなり個人差があります。

戦後処理については、カタがつくどころか、いまださまざまな取り組みがされていることに驚きました。戦後処理はカタがつく、つかないという次元の問題ではなく、人々が必要があると思ったところでずっと続けられていくものだと思いました。例えば「この工場でいったい誰が強制労働を強いられていたのか」を調べることは誰でもできます。

この国だけは手本にしてはいけない(?)、と思われているかもしれないギリシャのめぐむさん?

【有馬(ギリシャ)】
ここ数年、ギリシャは経済危機報道ですっかり有名になってしまいました。ギリシャは改善されるべき点が多くある国ですが、同時に美点もたくさんあります。昨年は一時帰国する機会が何度かあり、テレビでギリシャ情報を観ていると、きちんと取材した報道番組もありましたが、中には現地の常識や慣習とかけ離れているものもありました。この情報化社会を持ってしても、内容に何十年単位の“時差”があるようなものも…。今時、アテネの会社員でシエスタをしている人はいませんし、労働時間が極端に短いようなこともありません。誤解がマイナスイメージを増幅させている気がしたので、在住者の視点でギリシャのよいところも知っていただきたいという気持ちがありました。

またアテネの都心の一部で起きているデモなどの映像が何度も繰り返し流されることにより、あたかもギリシャ全土が、ずっと混乱状態にあるような印象を与えてしまうのですが、デモは短時間、局所的に行われるものです。昨年はこれらの騒動が日本でかなりクローズアップされたので、ギリシャへの旅行を控えてしまった人もいらしたようですが、実際には観光客数は過去最大となり、収益は10%もアップしていました。

教育のお手本の国と言えば、フィンランド!ですね?

【靴家(フィンランド)】
私はもう、教育はもちろん、何に関してもことフィンランドとなると不勉強ですみませんというスタンスだったものですから、「フィンランドメソッド」という名前を日本で初めて聞いたときにも、また自分の無知からかと驚き慌ててしまいました。しかし、夫の姉が小学校の先生で、フィンランドの教育に関して疑問があれば何でも教えてもらっていたのに、義姉からは「フィンランドメソッド」って一度も聞いたことが無いなぁと気がついてから、私はますますフィンランドの教育に興味を持つようになったのです。しかし「日本で伝えられているイメージとのギャップ」を本当に実感として書けるようになったのは、長男が就学して、ある程度学校の様子がわかるようになった一年半前ぐらいでした。それまでは確かに、真実を知りたくて、うずうずもんもんとしていましたね(笑)。

今や、地球上に全うな政治機能を持つ国があるのかさえ疑いたくもなる昨今ですが、二大政党制のお家元、英国で何を感じていますか?

【伊藤(英国)】
そもそもイギリスの二大政党制が日本の政権与党の「お手本」として考えられていたという事実を知ったことが、今回の企画に参加しての最大の驚きでした。本家のイギリスでは、既存の二大政党のいずれもが過半数を得られていません。だったら「政治の迷走化」でも起こりそうなものですよね? ところがさすが議会政治発祥の地だけあって、腰砕けになるどころか、国民に不人気な政策を次々と実行。財源が足らないと見るや、すかさず 消費税を上げてしまうあたりは溜飲が下がります。先には、「ギリシャ救済は国のためにならない」とEUで唯一反対に回ったことには正直驚かされました。ギリシャが怒って、「ロンドンになんて聖火を送らない」なんていう事態にならなければいいですけど……。

自然保護大国として知られている、ニュージーランドでは、どうですか?

【内田(ニュージーランド)】
私がニュージーランドに行った理由のひとつが、「自然破壊大国」の様子を自分の目で見てみたいということでした。ニュージーランドはとても人間が住みやすい国です。しかし、ほんの千年ほど前まで全く人間は存在せず、ここ二百年で森が一気に農地に変わっていった。それはそれは、効率的な「開発」だったわけです。でも、日本人の観光客のほとんどは、そうしたことに思いを巡らせることなく、「わあ、羊だ!」と喜んで帰っていってしまう。なんとか、開発の陰で絶滅に追い込まれているもとからいる動物たちのことを知ってもらいたい、といつも思っていました。そして同時に、猛反省したニュージーランドがいかに国家を挙げて自然保護に取り組んでいるか、ということも。ニュージーランドの事例は、私たち日本における「開発」と「保護」のあり方を考える上でも大切だと思いますので。

国策として少子化問題を乗り越えた、と思われているフランスではいかがでしょう。

【中島(フランス)】
別にいらいらすることはありませんでしたが、事実が不正確に伝わっているなと思うことはありました。

フランスでは、大々的な出生率アップのためのキャンペーンが張られたというような事実は、近年においてはそんなにないのです。ただ、今の日本のような、あるいはそれ以上に少子化が心配されて「国策」として出産奨励策が取られた時期はあります。それは、普仏戦争後から第二次大戦前後の頃でした。

日本でフランスの「少子化対策」が紹介されるときに、育児手当のような、戦前に導入された古い政策に陽が当たってしまう。子どもを持つ家庭に金銭補償をすること自体は良いことだとは思いますが、それは出生率アップの決め手にはならないなあと思いました。

それと、個人的に一番、気になったのは、「出生率が高いのは婚外子が多いからですね」と言われたこと。一般に、「非嫡出子差別がないので婚外子が生まれやすく、中絶が避けられるので出生率が高い」と考えられているようです。でも、それは非嫡出子差別のために婚外子が生まれにくいという日本の事情を投影しているだけで、フランスでは婚外子の出生も多いですが、中絶もとても多いんです。婚外子が多いのは、「差別がないからシングルでも産む」というよりも、若い人は結婚する前に同棲を始めるのが絶対的なマジョリティだからです。結婚する前に子どもが生まれちゃうのですが、その後結婚するというケースがかなり多いです。

国民主権で人を裁くことこそ民主国家の表れという部分は理解できますが、アメリカでその現場にいて、いろんな側面を目の当たりにしていらっしゃる伊万里さんいかがですか?

【伊万里(米国)】
日本では裁判員制度の開始はそんなに歓迎されなかったと聞き、ああ、やっぱりな、と、なんで始めてしまったんだ!!と思いました。アメリカでは当たり前の国民参加の裁判ですが、いいことばかりではありません。むしろ問題点のほうが多くなってきているのでは、と思います。

日本では今後の「民族の多様化」という点は移民大国であるアメリカと違ってそんなに心配する事ではないとは思われますが、これからいろいろと綻びが出てくるのでは。。。

【やほい】
みなさんどうもありがとうございます。ここまで伺えば、まだ本をお読みになっていない方も、ざっと、本の中身が推察できるのではないかと思います。それぞれの方が取り上げているテーマはひとつなのですが、そこからお国柄がよくまぁこれだけ浮き彫りになったものだと感じました。まさに、着眼点が鋭いのだと思います。たいへん興味深い内容ですのでまだお読みになっていない方は是非お手にとって見て下さい。

それでは、次の質問です。今回は『「お手本の国」のウソ』ということで、真似してもダメよっという裏側を知らせてくれましたが、生活者の目で見て、こここそ、お手本にしたらいいのに、と思うようなことはありますか?

【田口理穂さん(ドイツ)】
ドイツの脱原発、そして国として再生エネルギー推進をしていこうという姿勢は見習う価値があると思います。2000年に再生エネルギー法を定め、風力、水力、太陽光、地熱、バイオマスなどの再生エネルギーを固定価格で20年買い取ることを法的に保証しました。これにより投資の対象となり、技術開発が進み、2011年には電力の2割をまかなうまでに伸びました。

このように法的枠組みを作ったのは画期的で、ドイツを手本に約50カ国で同様な法律ができたそうです。ソーラーパネルを自宅の屋根につけると確実に採算が取れ、節約につながるのでありがたいですね。この分野の技術が進んでいる日本でも法的整備をすれば、ぐんと伸びると思います。

【靴家さちこ(フィンランド)】
フィンランドであれば、合理性が挙げられるかと思います。例えば、冬の間雪に埋もれて使えない学校の校庭をトラクターで整備し、散水車で水を撒けば、一晩で野外スケート場が出来上がります。この整備にかかるお金は税金からねん出し、無料で市民が通いたい放題。白夜の反動とも言うべき暗さに包まれる冬に体を動かすことは誰にとっても重要なことなので、この税金の使い方に意義を唱える人はいません。日本でも消費税を引き上げて福祉国家を目指しつつあるようですが、是非どこにどれだけのお金が使われているか、情報を透明に保って、国民の誰にとってもありがたい公共サービスを獲得していって欲しいと思います。

【伊藤雅雄さん(英国)】
うーん、日本がイギリスを手本にしていいことなんてあるんですかねえ?

今回の企画を進めていて、日本はアメリカとは仲がよいことになっていますが、公益事業では割とイギリスを模範にしようとしている部分があるようですね。たとえば、身近なところでは、健康保険料削減のために英国で行われている家庭医の制度を日本に応用しようとか、消費税の増税に当たり、食品などの生活必需品は低税率にしようとか、そんなメソッドは、たぶん民主党がイギリスの制度をお手本にしていると思いますね。

【内田泉さん(ニュージーランド)】
会社の採用基準、でしょうか。日本だと、新卒でなくては会社に入れない、しかも大学で何をやっていても大学の名前さえあればオッケーというのが普通ですが、ニュージーランドでは入社条件が全く違います。何を学んできたか、そして面接が何よりも重視されていますし、大学を卒業後に数年ぶらぶらしていても、それがハンディになるようには見えません。

若い頃には「自分が何をやりたいか」がまだはっきりしないものです。ニュージーランドの人は、高校を出てから数年バイトや旅をして、それからやりたいことを見つけて大学に入ったり、大学を出てから海外で力試しをして、また国に戻ってきたり、という動きをするのが普通です。自分のレールは自分で敷く、ということでしょうか。こういうことが日本でもできれば、ずいぶん学歴競争社会、変な派閥、未熟な社会人などが減るのになあ、と思います。

【中島さおりさん(フランス)】
フランスで出生率が高いのは事実です。フランスではこれを女性の就業率の高さに結びつけるのが常識なのですが、そういう認識がなかなか日本の人には共有されないようです。女性が働きながら子どもも育てられる環境ができれば、「仕事か子どもか」で子どもを産まない選択をする女性は必ず減ります。共稼ぎで子どもが育てられれば、夫の収入が低いから子どもを持つのを躊躇する必要は減ります。離婚しても自分で育てられる経済力があることも産むハードルが低くなると思います。

それから、婚外子の多さにも反映している同棲、事実婚ですが、結婚も含めてフランスと日本では男女の結びつきの形が異なると思います。フランスの若年層は7割がカップルで暮らしています。日本はシングル率が非常に高い。これでは子どもは生れません。経済的また心理的に、若い男女がいっしょに暮らせる社会をつくるように考えたら、出生率は上がるだろうと思います。この本の中ではその辺りのことを書きました。

【伊万里穂子さん(米国)】
久しぶりに日本の求人広告を見てびっくりしたのが、性別や年齢を限定しての求人ということでした。年齢差別や性別の差別などアメリカではもちろん違法です。もちろん雇う方の「こういう人が欲しい」という気持ちは分かるのですが、

少しはアメリカのように「みんなに公平にチャンスを与える」という姿勢は見習ってもいいと思います。日本は公務員の求人も「昭和何年生まれ(今はもう平成何年生まれ、ですかね)以降の者」ってすごい限定してますから、驚きです。あとは履歴書の写真は必要ないと思います。アメリカの履歴書にはなんで写真がないんだろう、と思いましたが、「なんで写真がいるの?モデルのオーディションじゃあるまいし」とアメリカ人の夫に指摘され、あ、そうか。と。。

雇用均等法とか、確か日本にもあったような気がするのですが、やはりアメリカに比べると遅れている気がします。

ギリシャのめぐむさんは、本の中ですでにその切り口でしたので、逆に、お手本にすべきではない点をお願いします。(笑)

【有馬めぐむさん(ギリシャ)】
ギリシャは民間企業で働く人々、特に旅行業界はこの本に書かせていただいたとおり、とてもがんばっていると思いますが、政治はおそまつですね。数十年に渡って、二大政党を中心に、世襲の多い特権階級的な政治が繰り広げられてきました。そして大企業や富裕層を優遇したり、公務員を増やしたりと、八方美人的な政策が施行されてきました。いわば国内事情ばかりを優先させて、国際的な戦略を怠ったために、いまその煽りが経済危機として、国民にのしかっているとも言えます。国民も長期的な視点で物事を見ず、目先の利益に飛びついてきた部分もあると思います。政治舞台に優秀なリーダーがいないので、まだまだ混迷は続きそうです。日本も次元は違えど、いろいろな問題を抱えているので、他人事ではない部分もあると思いますね。今後も両国を見つめながら、ギリシャがどのように問題を解決していくかを見守りたいと思います。

【やほい】
なるほどですね。どこの国にも良い面悪い面があるのは当たり前といえば当たり前ですが、日本の内側からの「隣の芝は青い」がごとくの情報に惑わされないよう、今後も皆さま方には日本の外に住む日本人として「ホントのところ」を伝えて下さることをおおいに期待しています。

今日はどうもありがとうございました。

「お手本の国」のウソ (新潮新書)

6:「一番の宝物は自分で創りだしたものでなければならない」/近藤雄生さん

現在は京都在住の近藤雄生さん

2012年スタートは、『旅に出よう』『遊牧夫婦』『中国でお尻を手術』の著者、近藤雄生さんです。近藤雄生さんは2003年から奥さまといっしょに5年間、世界を遊牧する暮らしを実践され、その体験を本にされています。

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5:「負けるな、ニッポン」チャリティ・ブレスレット・プロジェクト/栗田路子さん

ベルギー在住栗田路子さん

今月の「ひと・人@広場」はベルギー在の栗田さんをご紹介いたします。栗田さんは、執筆、翻訳、コーディネーターなどの本業だけでなく、草の根的に、震災孤児を助けるため、「負けるな、ニッポン」チャリティ・ブレスレット・プロジェクトを立ち上げ、日本円にして約107万円以上(10200EUR)を被災した岩手県大船渡にある養護施設、大洋学園に送る活動をされています。

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4:「YOU CAN DO IT, JAPAN! Project」/スズキマサミさん

当海外在住メディア広場でもお馴染みの米国・シアトルのスズキマサミさんが始めた日本復興支援プロジェクトについてご紹介します。

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3:日本と台湾をつないでいきたい/有川真由美さん

台湾・高雄市在住の有川真由美さん

「人・ひと@広場」5人めの今回は、有川真由美さんにご登場いただきました。現在、有川さんは台湾で大学院に在籍しながら、精力的に執筆活動をされています。

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2:パリに渡り、オルガニストに!/プラド・夏樹さん

フランス・パリ在住のプラド・夏樹さん

ライター活動だけでなく、オルガニストとしてもご活躍されているとのことで、以前から是非お話を伺いたいと思っていました。今日はどんなお話が聞けるかとても楽しみです。

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1:スペイン・トレドの魅力を伝える/河合妙子さん

スペイン・トレド在住の河合妙子さん

2011 年最初の「ひと・人@広場」は、スペイン・トレドで、ライター、フォトグラファー、コーディネーターとしてご活躍の河合妙子さんにご登場いただきました。

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世界を駆け巡る、ぶっ飛び料理人/マーシャン祥子さん

m-sachiko_2マーシャン祥子さん(オーストラリア・シドニー在住)

今回の、突撃インタビュー「人・ひと@広場」は、オーストラリアで出張料理人をされているマーシャン祥子さんにご登場いただきました。

【やほい】
最近、オーストラリアの永住権を取られたそうですね。
おめでとうございます。

【祥子】
ありがとうございます。永住権を取るのは、フランス人の夫との目標でもあったので、とても達成感があります。

【やほい】
自分の暮らす場所で、自由に働いたり、勉強したりするって、日本人が日本で暮らしているぶんには意識することもないですけど、ひとたび、海外で暮らすことになると、避けては通れない現実ですよね。永住権取得には長くかかったのですか?

【祥子】
3月から準備を始めました。始めた当初は必要書類の多さや費用の面でも気が遠くなっていたんですが、夫がグラフ付プランを書いた大きな紙をでかでかと壁に貼り付けて、終わっては×、とひとつずつ進めていったんです。3カ月後に予定されていた英語の試験のために、ゆっくり勉強しようと心に決めた数日後、夫から電話がかかってきて「3日後にテストのキャンセル待ち取れたから受けてよ」と言われたんです。

「え!?何も勉強してないけど?」とあせりましたが、早く永住権を取りたかったので、必死で3日間勉強して無事にパス。その後は全ての書類も揃い、夫の会社を通じて申請をしてなんと2週間半でゲットできました!

【やほい】
なんて早いんでしょう。でも、自由の切符を手にして、すっきりしましたでしょう。

【祥子】
フランス人と日本人である私たち夫婦にとって、オーストラリアはお邪魔してる国、いつかは出て行かなきゃいけないという以前の状況がなんとなくストレスだったんです。労働ビザだったので、首になったら28日以内に出国しなければならなかったし。自分たちの意思以外の何かによって、暮らしが左右されるのって、やはりどこか息苦しさがあると思うんですよね。

【やほい】
これで、自由に働けるし、いや、休むこともできますね。労働ビザの場合は、自由に休むこともできませんものね。これで、オーストラリアに永住ですか?

【祥子】
一生オーストラリアで暮らすつもりではないし、またフランスや日本、他の国でくらしたい気持ちもたくさんあるんですが、それはビザや国籍と言うステイタスではなくて夫婦と言うユニットとして自由に選択していけたらいいじゃないですか。永住権は私たちにとって、一生住める安心感と言うよりも、自分の意思に正直でいられる自由の象徴みたいな感じです(笑

【やほい】
なるほどね、とってもよくわかります。日本人なら、北海道で暮らそうと、沖縄で生きようと自由なように、これが地球レベルで可能になったらいいのにね。あちこちで生きてみたい者にとっては国境の壁は高いですよね。

ところで、現在はシドニーにお住まいということですが、その祥子さん、あちこちで生きてみたいの典型というか、ここに来るまで、ずいぶんと“流れて”いらっしゃいますね。(笑)

さしつかえなければ、オーストラリアに到達するまでの経緯を簡単に教えていただけますか。

【祥子】
本当に流れました(笑 流れすぎて途中から日本の家族や友達も、生存が確認さえできれば安心、という感じでしたね。うちの母は会社の壁に世界地図を貼り付けて、今はここ、今はこっちの大陸、今はこの島、と毎回同僚に説明していたらしいです……なんて親不孝なんでしょう。(涙

【やほい】
実は、祥子さんの「メディア広場」登録のときのプロフィールを拝見したときから、居住国があちこちで、「なんておもしろそうな人」と思っていました。

【祥子】
2005年の冬からフランスに料理の修業に出たのが全ての始まりです。

【やほい】
料理修行や絵描きを目指して“フランス”! というのは、よくありがちなパターンですよね。もっともその行動力はありがちながらスゴイことですが。

【祥子】
東京で料理の講師や、フランス料理レストランでの厨房の仕事をしていたため、本場の料理や素材をこの目で確かめてみたかったんです。それまでは2000年からアジア諸国や北アメリカを転々とバックパックで旅していましたが、これが初めての本格的な海外暮らし。

独学で身に付けた赤ちゃん程度のフランス語で、職場の住むあてもないままフランスの南西部、サーフィンの有名なビアリッツに突撃し、なんとか四つ星ホテルで仕事を見つけて働き始めました。

【やほい】
赤ちゃん程度のフランス語で、この行動力ってとこが勇気ありますね。勇気というより無謀って感じかな? スイマセン(笑)

【祥子】
大好きな料理とサーフィンに没頭した、正に青春の1年でした。フランス料理レストランで、本当の美食や、郷土料理バスク料理を学びながらも、日本人としてなにかお返しがしたいと思い、休みの日にはお寿司のケータリングをひとりで行っていました。

【やほい】
ほんと、まさに青春だわ! テレビドラマみたいな話ですね。(メディアの皆さん、テレビドラマのプロデューサーさん、これご覧になっていたら、ノンフィクションストーリーでどうですか?)

【祥子】
これを通じてたくさんの人との出会い、触れ合いがあり、フランスの文化、そして外から見る日本の文化、とにかく多くのことを学び、それはまさにプライスレスな経験でしたよ!今思い出すだけでも胸がきゅんと……。

【やほい】
はい、伺っているだけでも感動します。(私の頭の中には『ロッキーのテーマ』が流れ始めています)

【祥子】
それからヨーロッパ、アフリカ、アジアの旅を経て、日本に一時帰国をしてから、インターネットでのやりとりで承った、メニュー開発の仕事のため、すぐにカリブ海はドミニカ共和国に旅立ちました。

【やほい】
はじめてプロフィールを拝見したときに以前の居住国にドミニカ共和国が入っていたので、レアな国にいらした方だなって思ったんですよ。以前、仲良しだったご夫婦に、ドミニカ国出身の方がいたので、“ドミニカ”に反応してしまいました。日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、ドミニカっていうと、ドミニカ共和国と、ドミニカ国とは別の国で、ドミニカ国は英語が公用語ですけど、ドミニカ共和国は……?

【祥子】
今度はスペイン語だったので、必死に2週間CDを聞いて叩き込み、たどりついたらすぐに、ドミニカ人のスタッフだらけの厨房へ。ほぼジャスチャー大会な毎日でしたが、老舗の日本料理レストランに、ドミニカ人に会うようなフレンチテイストの和のメニューを取り入れるということで、試作、試食、教えるの繰り返しで本当にやりがいがありました。

【やほい】
悪戦苦闘振りが伝わってきますが、『ロッキーのテーマ』さらにクライマックスです。

【祥子】
見たこともない素材を使って斬新でそれでも日本人として誇れる料理をつくるというのは、自分にとっても勉強になります。戦後に移住した日本人の方とも接する機会があり、日本人畑でとれたぽんかんを使ってマーマレードを作り、そしてドミニカで採れたカカオの実からチョコレートを自家製で作って、そのふたつをあわせてポンカンのガトーショコラをつくったことなどが印象に残っています。

【やほい】
おいしそう!ほんとにドラマの一シーンみたい。

m-sachiko_1【祥子】
二つの文化が口の中でひとつになった瞬間、鳥肌が立つほどでした。
TVでお茶のセレモニーをやらせていただいたり、TVショーや新聞でも取り上げていただいたり、プライベートでもたくさんラテンダンスとサーフィンを堪能し、仕事だったのかバカンスだったのか、今でも謎な4ヶ月でした。

【やほい】
ひとことでいうなら、「ひたむき」ですね。

【祥子】
その頃不運にもひざを怪我してしまい、松葉杖で世界を一周して、また日本へ帰国し料理教室をしながら療養していたんですが。

【やほい】
お~、またまたドラマチック!ドミニカ共和国で、ひたむきに厨房をしきりながらも、青春を楽しむ少女が、今度は怪我……。

【祥子】
治ったらまた飛びたくなってしまって、仕事を見つけてスペインへ。これもメニューの開発の仕事でしたが、非常にレベルの高い現場で、絶対的に自分にかけてる何かに気づいてしまったんです。

【やほい】
立ち直り早いし……今度はスペインですか。確かに、発展途上の国と先進国では、いろんな意味でレベルはちがうでしょうね。

【祥子】
ドミニカでTVや新聞でちやほやされていた自分にはショックでした。

【やほい】
「井の中の蛙」で舞い上がっていてはいけませんが、ドミニカで貢献されたことにも大きな意味があったと思いますよ。

【祥子】
そして行き詰った私はその職場を去ることを決め、ジブラルタル海峡を渡ってモロッコへ。以前に来たときに衝撃を受けた、猛烈に美味しかったモロッコ料理、タジンと、スパイスの勉強をするためにこもることにしたんです。美食なだけでもなく、斬新なだけでもなく、心に響く、そして残る本当に美味しい料理というものを自分なりに追求してみようと、なんと家を借りて、5ヶ月もモロッコに篭ってしまいました。

【やほい】
今度はモロッコ!アラビア語とフランス語ですね。

m-sachiko_3【祥子】
毎日家庭やレストラン、スパイス屋を突撃し、今度はアラブ語で勉強しながらも、また日本人としてお返しをしたくなってしまって、中古のバンと中古のキッチンを購入して自分で車内にキッチンをうちつけて、なんと動く寿司レストランを作ってしまいました(汗。 モロッコの南の海の幸の美味しい町で、その日一番のサーフポイントに開店して、欧米のサーファーにお寿司を売ってました。

【やほい】
しつこいですけど、やっぱりドラマチック!!!っていうか「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、まさにソレですよね。キッチン付きバン(それも手作り!)でサーファーに寿司を売る日本人@モロッコですもん。(笑)

【祥子】
色々あって、許可も下りず、ビザも取れず、出国を余儀なくされてしまったんですが、本当に日本人の独身女性が一体、あんな世の果てみたいな場所で何をしていたのだろうと、今思うと不思議で仕方がありません。でも、誰にもできない、最高の経験ですね。

【やほい】
しかし、祥子さんってどんな逆境にも負けない方なんですね。どんな試練も乗り越えてしまうというか、そこの前にある崖には登りたくなってしまうんですね。「落ちるかもしれない」とは考えないタイプなのでしょうか?

【祥子】
自分の料理の追及、そして小さな夢だったムービングレストランを叶えられた、私の人生になくてはならない5ヶ月でした。

【やほい】
このうえない、プラス思考が気持ちいいです。ややもすれば、同じ経験をしたとしても、「もう二度とあんな経験は嫌」ということもあるかもしれませんよね。

【祥子】
ビザの問題でモロッコを出国しなければならなかったので、ワーキングホリデービザのあったオーストラリアに飛ぶことにしました。あまりにも流れすぎていたため、そろそろ自分のライフが欲しくなっていたのも本音で。この国に足を踏み入れた瞬間から、ここで、もうちょっと腰をすえて想いを形にしてみようと思ったのです。

ご縁があってここシドニーで夫と出会い結婚し、モロッコからの経験をバネに無事永住権も獲得した現在は、出張料理とお料理教室をお客様のご自宅で提供するビジネスを展開しています。まだまだ毎日が勉強ですが、心に響く、そして残る料理を作り続けていきたいと思っています。

【やほい】
しかし、その小さな体のどこから、これほどのバイタリティーがわいてくるのでしょう。お話を伺って、見えてきましたが、きっと、壁にあたっても、ショボンとしないタイプなのかしら。それどころか、何かにぶつかると、次にできることをすぐに考えられる柔軟さと行動力が備わっているようですね。流れているうちに、この力もついたのでしょうが、それが今の祥子さんを作っているんですね。

【祥子】
実は19歳の頃からパニック障害の発作を抱えているんです。悪化すると乗り物に乗れなくなったり、家から出れなくなったり、本当にやっかいなんですが。今でも飛行機乗る前は予期不安との戦いなんですよ(笑 発作の苦しみを知っているからこそ、それに負けたくない気持ちと、そして元気な時にどこまでも幸せや楽しみを追求したくなる、ある意味反動みたいな感じで、バイタリティが沸いてくるのかもしれないですね。落ちることを覚悟しているからこそ、何でもチャレンジできる、落ちたときこそ何かを学ぶチャンス!そんな感じです。

【やほい】
とっても貴重な体験ですので、是非また自伝にするとか、ノンフィクションエッセイで連載でも初めてみてはいかがでしょうか。とっても元気をくれるストーリーになることまちがいなしです。

楽しいお話でもっと続きを知りたいところですが、今回はこのへんでやめておきますね。最後に、祥子さんが、今後も各メディアを通して、伝えたいことがあるとしたらそれは何ですか?

【祥子】
小さい頃から料理が大好きで、私はその情熱だけでこうやって流れながらも生きています。傍から見たらハチャメチャな人生ですが、体当たりで向き合っていく世界は私には万華鏡みたいにキラキラと形を変えて色んな模様に映ります。現在シドニーで展開している
Dining Storyはそんな日々見たり感じたりする世界を料理に乗せてお届けする、出張料理と料理教室のサービスです。

何も無駄なものなどないこと。
好きなことに夢中になること、そしてその気持ちを育てること。
ありのままの小さなことにも幸せをみいだすこと。
海や大地の恵みを感じて喜ぶこと。
私も何かできるかも!?っていうような笑顔と元気と勇気。
そんなスパイスがちりばめられた出張料理と料理教室です。

日本でも料理のサービスができればいいのですが、さすがに海を越えての出張は難しいので(笑)料理人ライターとして選んだオーガニックな言葉に乗せて想いを日本に世界にお届けできればと思います。

料理、旅、文化、国際結婚、サーフィンなど、体当たり系のルポを書くなら右に出るものはいません。通訳無しであの国にいってこんな体験をして撮影も勝手にして記事を仕上げてきてください、そんなお仕事が理想ですねー♪

【やほい】
さて、皆さんいかがでしたか? あまりに明るく軽快なので、苦労を感じ取る暇もなく、すっかり元気ばかりをもらいましたが、よくよく考えるととっても奇想天外な生きかたを“選んで”いらしたマーシャン祥子さんでした。彼女の魅力、届いたでしょうか。

マーシャン祥子さんのプロフィールはこちらです。

祝『中国人ご一行様からクレームです!』ご出版-伊藤雅雄さん


今回は、ロンドン在住でありながら、最近『中国人ご一行様からクレームです!』をご出版されたばかりの、伊藤雅雄さんをご紹介いたします。

【やほい】
このたびは、ご出版おめでとうございます!まずはじめに、ご自身で簡単な自己紹介をしていただけますか?

【いとう】
すでにサイトにも拙著を紹介いただきありがとうございます。いまはロンドンに住んでいますけど、もともとは根っからの中国屋でして。大学で中国語を習って、そのあと旅行会社で中国に行かれる日本人ツアーの手配や添乗をやっていました。

中国へは80年代後半から行き来していますから、もうかれこれ25年近くのつきあいになっちゃいましたね。ロンドンには2007年に来て、2年あまりが経ちました。いまは、日本から来られるお客様のお世話をしていますけど、中国人団体の受け入れをやっている同僚の動きが気になってしょうがありません(笑)。

【やほい】
長年、中国屋さんをしてきた伊藤さんとしては、ロンドンで暮らしながらも、中国の人々が気になるというわけですね。その魅力って一言でいうと何なのでしょう?

【いとう】
「魅力」といえるものなのかどうかわかりませんが、中国の人々の「新しい物事」に対する興味の持ち方って、年齢に関係なく「素朴で率直」なんですよね。日本人はややもすると、「無関心を装う」傾向が強くて他人と話をするのを避けるように思うのですが、中国の人々の方がそういう部分では親しみやすいですね。

【やほい】
さて、その伊藤さんの新刊を拝読しましたが、紹介されているエピソードが楽しくて、あっというまに読み終わってしまいました。その昔(歳がばれますが70年代……)、私は旅行会社に勤めていましたので、この本の中で紹介されているお話は、当時の日本人団体ツアー客を彷彿とさせ、つい苦笑してしまいました。「ヨーロッパのホテルでビデで用を足してしまった」「ホテルのベッドにふとんがないのでなんとかしてほしい」「店のくせに日曜に休んでいるとは何事だ!開いている店をすぐ手配してくれ~」なんてハプニングは当時の添乗員を泣かせたものです。

話は本に戻りますが、この本、日本に旅で来られた中国人がそれぞれのクレームを語り、それに対して、日本、中国両サイドの視点が理解できる伊藤さんが双方の見地から検証しさらに「彼らについての傾向と対策」が添えてあるという構成がおもしろいですね。とっても親切です!!

【いとう】
中国人訪日客の分析的な話をまとめた書籍を作りたいと考えておられた出版社(三修社)の方からお話をいただいた際、中国人の「行動様式や習慣、歴史的背景」などを日本の読者に分かりやすく伝えるか、どうまとめるかについてなかなか良い形が思い浮かびませんでした。実際に書いていた時間よりも、本の体裁を決めるために「悩んでいた時間」のほうが長かったかもしれないくらいです。半分ほど書いたところでふと思いついたのは「これは中国人論を語る本ではあるけれど、実は日本人の海外旅行で起こったトラブルや問題点を改めて分析する必要がある、という1つの結論が出てきました。

【やほい】
なるほどね。いろんな角度から、お互いを知ってはじめてなるほど!ということになりますので、著者が「両者の理解者」というところがミソですよね。

【いとう】
書いている途中でふと感じたのですが、ロンドンから日本と中国とは、ほぼ同じ距離で離れています。アジアとは全く違う文化を持つ英国から日本と中国を眺めてみたら「第三者的な公平の目でそれぞれがとらえられるかも」という新しい視点が浮かびました。どちらかの国に軸足を置きながら書いたら、作品は別のものになったかもしれません。

【やほい】
本の中、「ホテルでの立ち振る舞い」の項目、「ドアを開けておしゃべりしてなにがいけないの?」というエピソードでは思わず苦笑しました。

【いとう】
やほいさんも旅行会社におられたのでお分かりだと思いますが、20年ほど前のことを思い出すと日本人の海外旅行はいまほど普及もしてなかったですし、平気でとんでもないことをしでかすツアー客も「割と普通に」いましたよね。確かにこの本を書いているとき、「ロックアウトされて寝間着でロビーをうろうろしている日本人のおじさん」のことや、「機内の禁煙席でがんがんタバコを吸う社員旅行のグループのこと」などいろいろなエピソードを思い出しました。

【やほい】
やっぱり……。(笑)

「割と普通に」あった事実を思い起こすと、日本人が日本人の常識で「○○人はとんでもない!」というのもおこがましいというか、「目くそ鼻くそを笑う」ということになりますかね?(笑)。そもそも、同じ日本人でも、地域によっていろんな文化や習慣の違いはあるわけですから、ましてやちがう国のことを知ろうともしないで、文句を言ったり、苦情をこぼすのは考え物ですよね。まずは「知ること」からはじめないと。そういう意味で、この本は、楽しく知ることができる本だと思いました

【いとう】
そうですね。今回の本で、日中間の微妙な文化や習慣のずれを際立たせることができたかな、と思っています。おかげさまで、サイト上であれこれボクの本の書評を見かけるようになったのですが、意外だったのは、インバウンド(外国人の訪日)旅行とはおおよそ関係のなさそうな大学生が「北京に留学に行く前に読んでおけば、中国の人々に対する誤解や不信感を抱かずに済んだかも」という書き込みをしていたこと。気が付いたら旅行のジャンルの書籍じゃなくて、もっと広範な「中国人論」的なことが書かれた書籍と思われているのが、著者であるボクにはむしろ新鮮です。

【やほい】
そんな読者さんがどんどん出てくると、著者としてもうれしいことでしょうね。

【いとう】
「異国の人はわれわれと文化習慣が違うんだから、価値観がずれているのは仕方がない」とあきらめてかかれば、いらいらしたり、不愉快な気持ちにもならずに済みますよ。ちがうものはちがうのであって、それを自分たちの文化や習慣に合わせてもらおうと考えること自体に無理があると思いませんか?

【やほい】
まったくそのとおりだと思います。「違うことがおかしい」のではなく、「違いを違いとして受けとめる」ことが大切ですよね。そのためには、お互いが違いを知る努力をしなくてはなりませんから、だからこそ、このような本の存在はありがたいですね。

最近、日本では中国人の観光客が多くなってきたということですが、ホテルや旅館などでは、違いの理解が足りないために、いろんな問題が発生していると聞きますから、そうした現場で働く方々にも、お薦めの一冊です。もっとも、私にとっては「へぇ~」が連発できて、かなり笑えたので、読み物としてもおもしろかったです。


中国人ご一行様からクレームです!

最後に、今回楽しい本を出版されましたが、このほかにも、今後メディアを通して伊藤さんはどんなことを伝えていきたいですか?

【いとう】
中国の人たちって、たしかに日本人の目にはわがままで粗暴に感じる面もあるでしょう。でも、日本に旅行で来ている大半の人たちは、わざわざお金を使って、「日本に興味を持って、訪れてみよう」と思ってやってくる、いわば「親日派」ではないでしょうか? そういった人々に「日本は楽しかった、面白かった」と言ってもらうためにどうするか? そんな疑問を投げかけながら、お互いの「相互理解」が深められるような何かを作って行きたいと思っています。

【やほい】
まさしく、歓待精神ですね。スタイルは違えど、日本も中国もホスピタリティー溢れる国という意味では共通していると思います。今後も、「相互理解」のための架け橋になるような、情報発信を楽しみにしています。

今回は、貴重なお話をどうもありがとうございました。

伊藤雅雄さんのプロフィールはこちら

靴家さちこ&セルボ貴子対談(フィンランド発)

靴家さちこ × セルボ貴子

ヘルシンキのカフェ・エンゲルにて

住んでみてわかった 本当のフィンランド
住んでみてわかった 本当のフィンランド
靴家さちこ,セルボ貴子

靴家:まずは貴子さん、お疲れ様でした。メディア広場仲間同士、同じフィンランド在住者同士の初の共著本が完成しましたね!

セルボ:本当ですね!さちこさんもお疲れ様でした。

靴家:振り返ってみると、どこが一番書きにくかったですか?

セルボ:私の場合は福祉制度、教育ですね。さちこさんは、いかがでした?

靴家:私も、教育が最も苦しかったです。やはり、教育に関しては、どれだけ今の日本の現状に即したことを書いているのか、最後まで自信が持てなくて辛かったですね。例えば、日本もこういうところをフィンランドみたいにやれば、と思いますよね。でも、それを実際に――

セルボ:実際に提案してしまうと、外野がやいやい言ってるだけみたいになってしまいそう、でしたよね。私も、義務教育については、訪問経験も含め、教育関係者や保護者たちなど多くの人に聞きました。でも5年後、息子たちが二人とも小学生になっていたら保護者としての実感をよりリアルに書き込めるだろうと、歯がゆさがありました。

靴家:それで、「書き足りない」と言われてたんですね。――ところで、この場で在住8年の先輩に聞きますが、言葉以外で今でもフィンランドで困っていること、慣れられないことって何ですか?

セルボ:暗い11月ですね。一度本当にがっくりきて、Yah●●!を使って日本の不動産物件を検索し「ここに引っ越そう!」と夫に言った事もあります。でも、なだめられましたっけ。

靴家:ああ、わかります。暗くて雨ばっかり降って、外国人である私達が参っているのに、地元人はそこに輪をかけて落ち込んでいたりしますからねぇ。

セルボ:もう一つは、近所の小学生たちがピンポンダッシュする事!毎年数回やられます。以前、子ども達が逃げる姿を見て、思わず「二度と来るな!」と怒鳴って、他人に声を荒げるなんて普段無いのでドキドキしましたよ。

靴家:ピンポンダッシュ!郷愁に駆られるなぁ。ところで、貴子さんは、子どもの頃から周りの人達に、将来は海外に住むんじゃないか、なんて言われていましたか?

セルボ:英語の響きに憧れたらしく、3歳の時にガイコクに行きたいと言っていたようです。さちこさんはやはり海外体験からですか?

靴家:そうですね。父の仕事で、タイに住んでいたことがきっかけとなっているようです。インターの幼稚園に通ってたんですけど、日本人の男の子相手だと、テレビ番組のヒーローごっこで蹴り合い殴り合いの野蛮な遊びばっかりしてたのに、西洋人の男の子には、新しい靴なんかを履いてったりすると「いい靴だね」なんてさりげなく褒めてくれたりするのでついデレデレしたりして。それが全ての始まりだったような気がします。――私、ニッポン男児にしばかれるでしょうか?

セルボ:いや、もう大丈夫でしょう(笑)。――フィンランド永住組の日本人は、在30年以上の大先輩たちを筆頭に数百名、これからもどんどん増えそうですね。そうした方々も含め、本書が多くの方にフィンランドを知る一冊になればと思います。今日は一年ぶりにお会いして楽しかったです、ありがとうございました。

靴家:こちらこそ、どうもありがとうございました。

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