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10:『免税販売・ショッピングの手引き』発売!/伊藤雅雄さん

menzei_book今回は、英国、ロンドン在住の伊藤雅雄さんが、
『免税販売・ショッピングの手引き』を出版されたときいてお話を伺いました。

『免税販売・ショッピングの手引き インバウンドへのアプローチ』
▼ facebook 「免税販売 ショッピングの手引き」

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【やほい】このたびは『免税販売・ショッピングの手引き』のご出版おめでとうございます。

 タイトルから“免税”という言葉が飛び込んできますが、具体的にはどのような方たちを対象にした手引き書なのでしょうか?また、この本の出版に至った経緯を簡単に教えていただけますか。

【いとう】日本にはもともと外国人や永住者に対する消費税の免税措置、という手続きが存在していたんですが、「そういうことができる」というPRがほとんどされておらず、積極的に免税制度を利用しようという旅行者は非常に少なかったのです。ところが、昨年秋に日本政府が「消耗品を含む、全ての物品に対して消費税を免税とする」という新しいスキームを打ち出しました。その結果、たまたま円安で増加傾向にあった訪日客が競って免税ショッピングを楽しむようになりました。とくに、新たな措置により化粧品や薬品が免税で買えるようになったことは、「良質な日本製」を欲する中華系の人々に大きな後押しとなったようです。

爆買い用に積まれたポッキー?しかし、新しいスキームが導入されたのに、PRの方法が悪いのか、訪日ツアー参加者以外にはほとんど免税ショッピングのルールが知れ渡っていません。まして、在外邦人にこういった情報が伝わることはなく、そういう事実を知る海外在住日本人はほぼ皆無です。そこで、まずは国外に住む100万人以上の日本人に「免税でお得なショッピングができること」を知らせようと、書籍の刊行に踏み切りました。

【やほい】なるほどです。日本で買い物することで「免税」の恩恵が受けられるのは、海外在住者なわけですから、日本の内側の方たちがそのような情報を日本語で、在外邦人に向けて伝えたいと考える人はそうはいないかもしれません。まさに、在外邦人だからこその目の付けどころといえますね。

 わたしもネットで調べてみたのですが、海外在住者への免税措置に関する情報は多少はでてきますが、わかりやすく説明してくれているものは少ないように思います。これも、対象が「海外居住者」と、限られた方たちだからでしょうか? とはいうものの、グローバル時代の昨今ですので、その数はすでに膨大ですよね。では、具体的にどんな人々が免税で買い物できるのか教えて下さい。

【いとう】細かい規定があるにはありますが、大まかに言うと、日本に観光などで「短期滞在」で訪れる外国人と、海外に2年以上在住する(予定の人も含む)日本人が免税ショッピングの対象となります。どこかの国の永住権を持っているかどうか、といった細かい条件はなく、駐在員や留学生でも外国に住んでさえすれば、要件は満たします

実際の手続きでは、外国での居住証明や出国航空券を見せるといった要求はなく、自己申告で済んでしまうのが現状ですね。

【やほい】空港にある免税店とはどうちがうのでしょうか?

【いとう】これは文章を書いている最中にも、どう表現したら分かりやすいか結構悩みました。というのは、このスキームで免税になるのは「消費税」のみ。一方、空港にある「免税店」では酒税やたばこ税、関税などが免税されて安く売っている訳です。英語では前者は「TAX FREE」、後者は「DUTY FREE」と分けられているのですが、日本語では「免税」という単語しかないんです。いちいち消費税免税店、なんて呼ぶ人はいませんし。用語がしっかりしていないから、PRが進まないのかもしれませんね。

【やほい】 “税”とひとくちにいっても、いろんな税があるわけですからね。それでは、どんなものが免税になるのでしょうか。

【いとう】恐ろしいことに、売っているもの全部について消費税が免税となります。買い物額の下限があって、食べ物や化粧品、薬品といった「消耗品」は1つのお店で5,000円以上、「耐久消費財」は同じく10,001円以上にならないと免税手続きをしてもらえません。

なお、「消耗品」は専用の密封袋に入れて渡され、出国まで開けてはいけないことになっています。また、自分がいくら外国に住んでいるからといって、スーパーのお弁当やアイスクリーム、生の肉類など、空港からの持ち出しまでに賞味期限が切れそうなものを免税で買うことはできません。もっとも、出国直前に大量の魚介を買って北海道から出国する、という強者がいるそうですけど。

【やほい】(笑)それはすごい! 免税でお買い物したい場合、どんなところに行けば免税で買えますか?

【いとう】制作作業中に最も多かった質問の1つが「どこの店で免税手続きを受け付けているのか?」というものでした。今回の制作中に、全国にある消費税免税店は13,000店を突破。あっという間に2万店くらいまで増えるかもしれません。調べたところでは、大手スーパーチェーンのイトーヨーカドーとイオンはほぼ全店で免税手続きを受けてくれますから、ご実家が辺鄙な場所にある方でも免税ショッピングが楽しめますよ。

【やほい】諸外国の免税手続きと異なる点はありますか?

【いとう】例えば、欧州から免税品を持ち出す際は空港の税関カウンターに買った商品を見せて、書類にハンコをもらわねばなりません。ところがこの手続きをするのがまた一苦労。なぜなら、欧州にも中国からの「爆買い団」が大勢行っていて、税関は長蛇の列なんです。

日本ではこの税関検査を大幅に簡素化。お店でもらった書類を提出するだけでOKとし、商品を見せる手続きを省略しちゃいました。つまり本当に商品が輸出されたかどうかを税関吏が目で見てチェックしていないのです。こんなんでいいのか、と思ってしまいますが。

【やほい】まだまだ、この制度の各国語による情報整備が待たれるところかもしれませんね。まさに大量購入される人々には、是非とも教えてあげたい内容です。実際のところ、免税ショッピングの現状はどうなのでしょうか?

menzei_service_counter 【いとう】日本で盛んに報道されている「爆買いの中国人」の標的(笑)のひとつは、ドラッグストアなんですが、ツーリストが集まる都心のお店を除いては、手続きに慣れていません。ですから、先にお店の人に「免税手続きをお願いする」という心づもりを伝えてから買い物を始めた方がよさそうです。そうすると慌てて店長を呼びに行ったりしますので。一方、スーパーや家電量販店の場合はそれなりに窓口のスタッフが教育を受けているようで、わりとすんなりと手続きしてくれますね。

【やほい】小売店をはじめ、ビジネスを展開する側からすると、海外から訪れる買い物客に対して、この制度の情報をわかりやすく説明し、簡単に免税で買い物をできるように整備することは、大きな販促に繋がるように思います。

【いとう】今年4月から、複数のテナントが入居するモールやショッピング街でも「合算での免税手続き」を認めるようにルールが変更されました。それ以前は、1つの建物での買い物ならまとめて免税手続きできる場所は百貨店だけでしたからずいぶんシンプルになりました。

さらに、何らかの認証方法を用いて、通信販売でも免税によるショッピングができると時間のない一時帰国者にはとても便利なんですけど、こちらの実現は難しいと思います。

【やほい】在外邦人としては、免税ショッピングに役立つ情報がもっと活発に行き来するようになってくれるいいと思うのですが……

【いとう】最初に述べたように、我々のような国外に住む日本人は100万人以上いますが、華僑のように明確な区画にまとまって住む習慣がないので、「在外邦人向けのお得な情報」をまんべんなく伝えるのがなかなか難しいように思います。とはいえ、あちこちの街には日本語のフリーペーパーがたくさん発行されていますから、そういったソースなどを使って「一時帰国時の便利なTIPS」を告知する方法はないかと思案中です。よく考えるとわたしたちのような在外組が日本に帰ると「インバウンド客」なんですが、観光庁などが取っている統計にはまったく上がって来ません。「在外邦人向けの格安プラン」をつくってくれるホテルや旅館、スーパーとかが出て来たらおもしろいですけどね。

【やほい】たしかにそうですね。海外で暮らすわたしたちのほとんどは帰郷しますしね。

言葉ができないからと、外国人への対応が後回しになっている“フツーの日本人”の方たちにとっては、隠れたビジネスチャンスのヒントがみつけられる一冊かもしれません。

 英国にいながら、日本のインバウンド事業について常に気に留めているいとうさん。現在は「外国人の目から見た日本のインバウンド旅行」に関する書籍も準備中だそうです。

「写真提供:イオン」

『棄国子女: 転がる石という生き方』 片岡恭子(著)を読んで/やほい


棄国子女: 転がる石という生き方
片岡恭子(著)

著者片岡恭子さんが赤裸々に体験を綴った本だけに、読むことで彼女のこれまでの人生を疑似体験することとなる。彼女が問いかけてくる言葉はどれも苦しいが力強い。

人生は一度しかない。刷り込まれた幻想に振り回されるのはもうやめよう。自分の人生の責任を取るのは自分だけなのだ。どこまでも自分の意思に忠実に生きたい。国にも他人の目にも絶対に殺されはしない……

日本の外で暮らすわたしにとってはうなづきどころ満載であり、痛快でさえある。

家族とは、親とは、国家とは、社会とは、常識とは、幸せとは、教育とは、労働とは……辛辣な批判も多いが、視点はやさしい。その洞察力から繊細さと頭の良さが伺い知れる。だからこそ世の中の闇の部分も敏感に感じ取ることができるのだろうか。

家族との確執、日本で感じる閉塞感、同調圧力の異常さ、辛さ、疑問、不信、不条理、理不尽……押しつぶされて気が狂うぐらいならと南米に自分を逃すべく旅に出た。彼女はそれを「緩慢な自殺」と呼んでいる。南米での体験は壮絶だ。そんな中で、いろんな角度から常に「生きること」を考察している。まさに、死ぬ気になって生き方を模索した記録は、究極の幸福論といえるのかもしれない。

現代の日本を生き抜くことに疲れている人にとっては、ひざを打つメッセージもたっぶりみつけられる1冊だ。

片岡恭子さんのプロフィールはこちら

 

『旅に出よう』近藤雄生著を読んで/やほい

旅に出よう――世界にはいろんな生き方があふれてる (岩波ジュニア新書)
近藤 雄生
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とても読後感の良い本でした。

これから世界を見たいと思う人、自分の夢をどう実現しようかという迷いのある若者にお奨めです。世界のなかの今の自分の位置づけを見極めるためにも役立つと思います。全体を通したエピソードのどれにも、著者の伝えたいメッセージがこもっていて、共感を呼ぶ内容でした。この読者ターゲットを中高生に絞っているあたりにもさらにエールを送りたいと思います。

著者の体験を読むことで、日本的な価値観が、絶対的、普遍的、また不変的なものではないことが、日本の外に出たことのない若者にも手に取るようにわかってくることでしょう。そして、グローバルな目で見れば、人の生きかたに枠などないことが見えてくるかもしれません。

たとえば、オーストラリアでイルカの保護のボランティアをする著者が、次の章では、インドネシアの捕鯨村の様子を伝えていますが、同じ「イルカ」にスポットをあてながら、国のちがい、文化のちがいを浮き彫りにすることで、「イルカの在り方の違い」が明確になります。特に、捕鯨に関してはいろんな論争がある昨今ですが、これは「論争」そのものに意味がないことを突きつけてくれるようなエピソードです。

ものの見方が必ずしも「正解」「不正解」で解決できないことは、今の地球には確実に存在します。著者にそのつもりがあるかないかはわかりませんが、ひとつのバリューにしがみつき他を優劣、善悪で判断を下すことに警鐘を鳴らされたような気さえします。いろんな違いを「理解し受け止めること」は容易いことではありませんが、平和のために、世界にはあきらかな「違い」が存在することを知ること、知ろうとすること、それをお互いにリスペクトすることがいかに大切かというメッセージを残してくれます。

また、著者が旅先で出会った、自分らしい生きかたを実践している日本人の紹介をしている部分にも、とても好感が持てます。自分がしたいことを追求し、その目標に向かうために努力している人に著者が出会い、「その人たちのことを伝えたい気持ち」が、著者の目標である「書くこと」に繋がり、こうしてカタチとなったこと、心から拍手です。

『うまくいく女にはワケがある』を読んで/やほい

うまくいく女(ひと)にはワケがある
うまくいく女(ひと)にはワケがある
有川真由美

仕事や暮らしの中でいろんな悩みを抱えていれば、誰しも「私ってちっともうまくいかないなぁ」と思うことはあるたろう。そんなときに出会えたら、とっても元気になる本がコレだ。

著者の有川真由美さん自身も、つまづいたり、失敗したり、もやもやしたり、空回りしたりしながら生きてきたのだろう。数々の成功や失敗を繰り返しながら、彼女は「うまくいっている女」からそのワザを学び、自分なりに分析し、「うまくいくコツ」を体得した。

ほとんどの凡人にとって、転んでは起き、起きては転びというのが目の前にある日常だろう。副題として、「幸運を引き寄せる仕事術25」と書かれてはいるが、仕事術としてだけでなく、ちょっと落ち込んだときにページをめくれば、知らないうちに元気になっていられそうな、さわやかなエッセイ仕立ての指南書となっている。

有川さんが世界中を旅して撮りためた写真が、25の項目ごとにステキに散りばめられていて、無駄のないとてもセンスの良い1冊と感じられた。

海外在住メディア広場登録者有川真由美さんのプロフィールはこちら

『働く女の人間関係の新ルール』を読んで/やほい

働く女(ひと)の人間関係の新ルール (アスカビジネス)
働く女(ひと)の人間関係の新ルール (アスカビジネス)
有川 真由美

長年、人間をしていれば「人間関係」がいかに人の人生を左右するかということに気づく。良いほうに導かれるも、悪く躓くも人間関係次第といっても過言ではないだろう。この本は、ちょっとした心がけ次第で目の前にある人間関係を円滑にするアイデアが満載だ!!

もちろん「今さら言われなくともわかっている」ということもあるが、さて、では実践できているか?というと、それは簡単ではないというのが「人の常」ではないだろうか。

この本が親切なのは理屈としてわかっているけど、行動できないことをどう変えていくかということを、101のルールとして具体的に説いてくれる。とかく漠然としがちなことが経験や実例をうまくあてはめて、内容をわかりやすく伝えてくれるので、「目からウロコ」うけあいの1冊だ。

今までに47種もの仕事経験があるという著者の有川真由美さんがみつけた、人間関係を築くための秘訣を、読み、心がけため息をつくのはもうやめようではありませんか。

海外在住メディア広場登録者有川真由美さんのプロフィールはこちら

『本当のフィンランド』を読んで/やほい

住んでみてわかった 本当のフィンランド
住んでみてわかった 本当のフィンランド
靴家さちこ,セルボ貴子

この本は、「海外在住メディア広場」に登録されているお二人のライターによって書かれた“本当のフィンランド”を知るための本だ。フィンランド人のご主人を持つ、日本人の靴家さちこさんとセルボ貴子さんだが、ごくふつうの生活者としてフィンランドで暮らすなかで、気付いたことや、日頃気になっていることを軽快なタッチ、そして平易な文集で紹介してくれる。

私自身も、日本、サモア、そして現在米国と3ヶ国のちがう国での生活経験を持つが、自分の生まれ育った国とはちがう価値観のなかで生きるというのは、いろんなちがいに戸惑うことも多く、またちがいを受けとめることには、少々(ときとしてかなり?)エネルギーが要るということを日々実感している。しかし、それを自分なりに分析してみたり、考えてみることは楽しいことでもある。

この本の中で、お二人はフィンランドでの子育てについて、自分なりの洞察を多いに語ってくれるが、日本、フィンランドのちがいを優越として何かを決め付けるのではなく、単なるちがいとして受けとめながら、自分にとってはどうだろう?という意見をさらっと語っているところに大変好感を持った。また、随所にみられるお二人の愛情あふれるママぶりも垣間見え、読みながら、お二人の優しさも伝わってくる。

さて、肝心なフィンランドという国について私自身は、北欧の国、サンタクロースがいる国、サウナ好き?という程度の知識しかない。あえて言うなら、たまたま私の次男がフィンランドロックが大好きなため、いつのまにかフィンランドバンドのロックを私はよく耳にしているが、このフィンランドのロックというのが、型枠にはまらない、不思議なサウンドを持つ個性的なバンドが多いと認識している。

この本を読みながら、そうしたバンドが生まれる背景には、フィンランドの音楽教育なども関係があるのなか?などと想像を膨らませたり、いつかこの目で「本当のフィンランド」を確かめてみたいと思いながら読み進んだ。

読後の感想としては、たくさん、たくさん書きたいことはあるが、ネタバレになってしまっても申し訳ないので、ここでやめておく。機会があれば、是非皆さんもお手にとって下さい。

そして、セルボさん、靴家さん、夜なべしておもしろい本を書いてくれて本当にありがとう! 本当のフィンランド確かめツアーに行ったときにはガイドをよろしくね。

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