今回は、ロンドン在住でありながら、最近『中国人ご一行様からクレームです!』をご出版されたばかりの、伊藤雅雄さんをご紹介いたします。

【やほい】
このたびは、ご出版おめでとうございます!まずはじめに、ご自身で簡単な自己紹介をしていただけますか?

【いとう】
すでにサイトにも拙著を紹介いただきありがとうございます。いまはロンドンに住んでいますけど、もともとは根っからの中国屋でして。大学で中国語を習って、そのあと旅行会社で中国に行かれる日本人ツアーの手配や添乗をやっていました。

中国へは80年代後半から行き来していますから、もうかれこれ25年近くのつきあいになっちゃいましたね。ロンドンには2007年に来て、2年あまりが経ちました。いまは、日本から来られるお客様のお世話をしていますけど、中国人団体の受け入れをやっている同僚の動きが気になってしょうがありません(笑)。

【やほい】
長年、中国屋さんをしてきた伊藤さんとしては、ロンドンで暮らしながらも、中国の人々が気になるというわけですね。その魅力って一言でいうと何なのでしょう?

【いとう】
「魅力」といえるものなのかどうかわかりませんが、中国の人々の「新しい物事」に対する興味の持ち方って、年齢に関係なく「素朴で率直」なんですよね。日本人はややもすると、「無関心を装う」傾向が強くて他人と話をするのを避けるように思うのですが、中国の人々の方がそういう部分では親しみやすいですね。

【やほい】
さて、その伊藤さんの新刊を拝読しましたが、紹介されているエピソードが楽しくて、あっというまに読み終わってしまいました。その昔(歳がばれますが70年代……)、私は旅行会社に勤めていましたので、この本の中で紹介されているお話は、当時の日本人団体ツアー客を彷彿とさせ、つい苦笑してしまいました。「ヨーロッパのホテルでビデで用を足してしまった」「ホテルのベッドにふとんがないのでなんとかしてほしい」「店のくせに日曜に休んでいるとは何事だ!開いている店をすぐ手配してくれ~」なんてハプニングは当時の添乗員を泣かせたものです。

話は本に戻りますが、この本、日本に旅で来られた中国人がそれぞれのクレームを語り、それに対して、日本、中国両サイドの視点が理解できる伊藤さんが双方の見地から検証しさらに「彼らについての傾向と対策」が添えてあるという構成がおもしろいですね。とっても親切です!!

【いとう】
中国人訪日客の分析的な話をまとめた書籍を作りたいと考えておられた出版社(三修社)の方からお話をいただいた際、中国人の「行動様式や習慣、歴史的背景」などを日本の読者に分かりやすく伝えるか、どうまとめるかについてなかなか良い形が思い浮かびませんでした。実際に書いていた時間よりも、本の体裁を決めるために「悩んでいた時間」のほうが長かったかもしれないくらいです。半分ほど書いたところでふと思いついたのは「これは中国人論を語る本ではあるけれど、実は日本人の海外旅行で起こったトラブルや問題点を改めて分析する必要がある、という1つの結論が出てきました。

【やほい】
なるほどね。いろんな角度から、お互いを知ってはじめてなるほど!ということになりますので、著者が「両者の理解者」というところがミソですよね。

【いとう】
書いている途中でふと感じたのですが、ロンドンから日本と中国とは、ほぼ同じ距離で離れています。アジアとは全く違う文化を持つ英国から日本と中国を眺めてみたら「第三者的な公平の目でそれぞれがとらえられるかも」という新しい視点が浮かびました。どちらかの国に軸足を置きながら書いたら、作品は別のものになったかもしれません。

【やほい】
本の中、「ホテルでの立ち振る舞い」の項目、「ドアを開けておしゃべりしてなにがいけないの?」というエピソードでは思わず苦笑しました。

【いとう】
やほいさんも旅行会社におられたのでお分かりだと思いますが、20年ほど前のことを思い出すと日本人の海外旅行はいまほど普及もしてなかったですし、平気でとんでもないことをしでかすツアー客も「割と普通に」いましたよね。確かにこの本を書いているとき、「ロックアウトされて寝間着でロビーをうろうろしている日本人のおじさん」のことや、「機内の禁煙席でがんがんタバコを吸う社員旅行のグループのこと」などいろいろなエピソードを思い出しました。

【やほい】
やっぱり……。(笑)

「割と普通に」あった事実を思い起こすと、日本人が日本人の常識で「○○人はとんでもない!」というのもおこがましいというか、「目くそ鼻くそを笑う」ということになりますかね?(笑)。そもそも、同じ日本人でも、地域によっていろんな文化や習慣の違いはあるわけですから、ましてやちがう国のことを知ろうともしないで、文句を言ったり、苦情をこぼすのは考え物ですよね。まずは「知ること」からはじめないと。そういう意味で、この本は、楽しく知ることができる本だと思いました

【いとう】
そうですね。今回の本で、日中間の微妙な文化や習慣のずれを際立たせることができたかな、と思っています。おかげさまで、サイト上であれこれボクの本の書評を見かけるようになったのですが、意外だったのは、インバウンド(外国人の訪日)旅行とはおおよそ関係のなさそうな大学生が「北京に留学に行く前に読んでおけば、中国の人々に対する誤解や不信感を抱かずに済んだかも」という書き込みをしていたこと。気が付いたら旅行のジャンルの書籍じゃなくて、もっと広範な「中国人論」的なことが書かれた書籍と思われているのが、著者であるボクにはむしろ新鮮です。

【やほい】
そんな読者さんがどんどん出てくると、著者としてもうれしいことでしょうね。

【いとう】
「異国の人はわれわれと文化習慣が違うんだから、価値観がずれているのは仕方がない」とあきらめてかかれば、いらいらしたり、不愉快な気持ちにもならずに済みますよ。ちがうものはちがうのであって、それを自分たちの文化や習慣に合わせてもらおうと考えること自体に無理があると思いませんか?

【やほい】
まったくそのとおりだと思います。「違うことがおかしい」のではなく、「違いを違いとして受けとめる」ことが大切ですよね。そのためには、お互いが違いを知る努力をしなくてはなりませんから、だからこそ、このような本の存在はありがたいですね。

最近、日本では中国人の観光客が多くなってきたということですが、ホテルや旅館などでは、違いの理解が足りないために、いろんな問題が発生していると聞きますから、そうした現場で働く方々にも、お薦めの一冊です。もっとも、私にとっては「へぇ~」が連発できて、かなり笑えたので、読み物としてもおもしろかったです。


中国人ご一行様からクレームです!

最後に、今回楽しい本を出版されましたが、このほかにも、今後メディアを通して伊藤さんはどんなことを伝えていきたいですか?

【いとう】
中国の人たちって、たしかに日本人の目にはわがままで粗暴に感じる面もあるでしょう。でも、日本に旅行で来ている大半の人たちは、わざわざお金を使って、「日本に興味を持って、訪れてみよう」と思ってやってくる、いわば「親日派」ではないでしょうか? そういった人々に「日本は楽しかった、面白かった」と言ってもらうためにどうするか? そんな疑問を投げかけながら、お互いの「相互理解」が深められるような何かを作って行きたいと思っています。

【やほい】
まさしく、歓待精神ですね。スタイルは違えど、日本も中国もホスピタリティー溢れる国という意味では共通していると思います。今後も、「相互理解」のための架け橋になるような、情報発信を楽しみにしています。

今回は、貴重なお話をどうもありがとうございました。

伊藤雅雄さんのプロフィールはこちら

yahoiひと・人@広場中国,伊藤雅雄,新刊今回は、ロンドン在住でありながら、最近『中国人ご一行様からクレームです!』をご出版されたばかりの、伊藤雅雄さんをご紹介いたします。 【やほい】 このたびは、ご出版おめでとうございます!まずはじめに、ご自身で簡単な自己紹介をしていただけますか? 【いとう】 すでにサイトにも拙著を紹介いただきありがとうございます。いまはロンドンに住んでいますけど、もともとは根っからの中国屋でして。大学で中国語を習って、そのあと旅行会社で中国に行かれる日本人ツアーの手配や添乗をやっていました。 中国へは80年代後半から行き来していますから、もうかれこれ25年近くのつきあいになっちゃいましたね。ロンドンには2007年に来て、2年あまりが経ちました。いまは、日本から来られるお客様のお世話をしていますけど、中国人団体の受け入れをやっている同僚の動きが気になってしょうがありません(笑)。 【やほい】 長年、中国屋さんをしてきた伊藤さんとしては、ロンドンで暮らしながらも、中国の人々が気になるというわけですね。その魅力って一言でいうと何なのでしょう? 【いとう】 「魅力」といえるものなのかどうかわかりませんが、中国の人々の「新しい物事」に対する興味の持ち方って、年齢に関係なく「素朴で率直」なんですよね。日本人はややもすると、「無関心を装う」傾向が強くて他人と話をするのを避けるように思うのですが、中国の人々の方がそういう部分では親しみやすいですね。 【やほい】 さて、その伊藤さんの新刊を拝読しましたが、紹介されているエピソードが楽しくて、あっというまに読み終わってしまいました。その昔(歳がばれますが70年代……)、私は旅行会社に勤めていましたので、この本の中で紹介されているお話は、当時の日本人団体ツアー客を彷彿とさせ、つい苦笑してしまいました。「ヨーロッパのホテルでビデで用を足してしまった」「ホテルのベッドにふとんがないのでなんとかしてほしい」「店のくせに日曜に休んでいるとは何事だ!開いている店をすぐ手配してくれ~」なんてハプニングは当時の添乗員を泣かせたものです。 話は本に戻りますが、この本、日本に旅で来られた中国人がそれぞれのクレームを語り、それに対して、日本、中国両サイドの視点が理解できる伊藤さんが双方の見地から検証しさらに「彼らについての傾向と対策」が添えてあるという構成がおもしろいですね。とっても親切です!! 【いとう】 中国人訪日客の分析的な話をまとめた書籍を作りたいと考えておられた出版社(三修社)の方からお話をいただいた際、中国人の「行動様式や習慣、歴史的背景」などを日本の読者に分かりやすく伝えるか、どうまとめるかについてなかなか良い形が思い浮かびませんでした。実際に書いていた時間よりも、本の体裁を決めるために「悩んでいた時間」のほうが長かったかもしれないくらいです。半分ほど書いたところでふと思いついたのは「これは中国人論を語る本ではあるけれど、実は日本人の海外旅行で起こったトラブルや問題点を改めて分析する必要がある、という1つの結論が出てきました。 【やほい】 なるほどね。いろんな角度から、お互いを知ってはじめてなるほど!ということになりますので、著者が「両者の理解者」というところがミソですよね。 【いとう】 書いている途中でふと感じたのですが、ロンドンから日本と中国とは、ほぼ同じ距離で離れています。アジアとは全く違う文化を持つ英国から日本と中国を眺めてみたら「第三者的な公平の目でそれぞれがとらえられるかも」という新しい視点が浮かびました。どちらかの国に軸足を置きながら書いたら、作品は別のものになったかもしれません。 【やほい】 本の中、「ホテルでの立ち振る舞い」の項目、「ドアを開けておしゃべりしてなにがいけないの?」というエピソードでは思わず苦笑しました。 【いとう】 やほいさんも旅行会社におられたのでお分かりだと思いますが、20年ほど前のことを思い出すと日本人の海外旅行はいまほど普及もしてなかったですし、平気でとんでもないことをしでかすツアー客も「割と普通に」いましたよね。確かにこの本を書いているとき、「ロックアウトされて寝間着でロビーをうろうろしている日本人のおじさん」のことや、「機内の禁煙席でがんがんタバコを吸う社員旅行のグループのこと」などいろいろなエピソードを思い出しました。 【やほい】 やっぱり……。(笑) 「割と普通に」あった事実を思い起こすと、日本人が日本人の常識で「○○人はとんでもない!」というのもおこがましいというか、「目くそ鼻くそを笑う」ということになりますかね?(笑)。そもそも、同じ日本人でも、地域によっていろんな文化や習慣の違いはあるわけですから、ましてやちがう国のことを知ろうともしないで、文句を言ったり、苦情をこぼすのは考え物ですよね。まずは「知ること」からはじめないと。そういう意味で、この本は、楽しく知ることができる本だと思いました 【いとう】 そうですね。今回の本で、日中間の微妙な文化や習慣のずれを際立たせることができたかな、と思っています。おかげさまで、サイト上であれこれボクの本の書評を見かけるようになったのですが、意外だったのは、インバウンド(外国人の訪日)旅行とはおおよそ関係のなさそうな大学生が「北京に留学に行く前に読んでおけば、中国の人々に対する誤解や不信感を抱かずに済んだかも」という書き込みをしていたこと。気が付いたら旅行のジャンルの書籍じゃなくて、もっと広範な「中国人論」的なことが書かれた書籍と思われているのが、著者であるボクにはむしろ新鮮です。 【やほい】 そんな読者さんがどんどん出てくると、著者としてもうれしいことでしょうね。 【いとう】 「異国の人はわれわれと文化習慣が違うんだから、価値観がずれているのは仕方がない」とあきらめてかかれば、いらいらしたり、不愉快な気持ちにもならずに済みますよ。ちがうものはちがうのであって、それを自分たちの文化や習慣に合わせてもらおうと考えること自体に無理があると思いませんか? 【やほい】 まったくそのとおりだと思います。「違うことがおかしい」のではなく、「違いを違いとして受けとめる」ことが大切ですよね。そのためには、お互いが違いを知る努力をしなくてはなりませんから、だからこそ、このような本の存在はありがたいですね。 最近、日本では中国人の観光客が多くなってきたということですが、ホテルや旅館などでは、違いの理解が足りないために、いろんな問題が発生していると聞きますから、そうした現場で働く方々にも、お薦めの一冊です。もっとも、私にとっては「へぇ~」が連発できて、かなり笑えたので、読み物としてもおもしろかったです。 最後に、今回楽しい本を出版されましたが、このほかにも、今後メディアを通して伊藤さんはどんなことを伝えていきたいですか? 【いとう】 中国の人たちって、たしかに日本人の目にはわがままで粗暴に感じる面もあるでしょう。でも、日本に旅行で来ている大半の人たちは、わざわざお金を使って、「日本に興味を持って、訪れてみよう」と思ってやってくる、いわば「親日派」ではないでしょうか? そういった人々に「日本は楽しかった、面白かった」と言ってもらうためにどうするか? そんな疑問を投げかけながら、お互いの「相互理解」が深められるような何かを作って行きたいと思っています。 【やほい】 まさしく、歓待精神ですね。スタイルは違えど、日本も中国もホスピタリティー溢れる国という意味では共通していると思います。今後も、「相互理解」のための架け橋になるような、情報発信を楽しみにしています。 今回は、貴重なお話をどうもありがとうございました。 伊藤雅雄さんのプロフィールはこちら海外事情に詳しい、海外在住のライター、メディア・コーディネーター、フォトグラファー、トランスレーター(通訳、アテンド)を探す、繋がるサイト