今回の「ひと・人@広場」はこのたび『市民がつくった電力会社~ドイツ、シェーナウの草の根エネルギー革命』を書かれた、ドイツ・ハノーファー在住の田口理穂さんです。

田口理穂さん(左)とウルズラ・スラーデクさん(右)

【やほい】
このたびは今の日本に“必要な本”の執筆お疲れさまでした。広場では原発事故以来、いろんな情報交換がなされましたが、なかでもシェーナウ電力会社発行の「原発に反対する100個のじゅうぶんな理由」を理穂さんに教えていただいたときには、これこそ世界じゅうに知らせるべきと思いました。今回それも収録された、シェーナウ電力会社の軌跡を知ることができとても元気が出ました。

簡単に紹介すると、ドイツの小さな地方都市シェーナウに住むスラーデク夫妻は、チェルノブイリの原発事故を目のあたりにし、有志とともに反原発運動をはじめました。運動をすすめるうちに既存の電力市場に疑問を持ち、寄付を募って送電網の買取りに成功。果ては自然エネルギーによる電力会社を作ってしまったという、壮大な実話なのですよね。

スラーデク夫妻の信念に基づいた行動力はまさに、「アッパレ!」としか言いようがありません。とくに、ウルズラ・スラーデクさんの言葉には、わたしたちが確実に受け取るべきメッセージがたくさん詰まっていると感じましたが、取材中に印象に残ったことをお聞かせ願えますか?

【理穂】
最初に同社を訪問したのは、ちょうど10年前でした。スラーデク夫妻をはじめみなさん、生き生きと仕事をしていたのが印象的でした。自分の信念に基づいてやっているから、義務的だったりおなざりだったりしない。「信じるところと、市民活動、経済活動が一致しているのは幸せなこと」といっていましたが、まさにそのとおりだと思いました。困難を可能に変える粘り強さがあり、けれど、楽しみも忘れない。企業としての損得勘定の前に、「原子力のない社会をつくるためには、どうすればいいのか」と考えつつ行動しています。

「信じることと経済活動が一致」というのは理想的ですよね。

最近では、脱原発を学ぶということなのか、ドイツやデンマークに自発的に視察にでかける人々も増えているようですが、脱原発に着々と方向転換しようとしているドイツと、今ひとつ釈然としない日本、両国を知る理穂さんから見て、どんなちがいを感じますか?

日本はドイツの電気代が高いとか、再生可能エネルギー買取法は問題が多いなど、揚げ足を取るような論争ばかりしているような気がします。

ドイツは、福島原発の事故を見て、原発の脅威を感じました。だから脱原発を決めました。これは国民の総意によるものです。あんな事故があったのに、日本でいまだ原発推進派が存在することが信じられません。これからも事故はいつ起こるかしれず、起こればどれだけ致命的なことになるか経験したにもかかわらず・・・。いくら電気代が高くなっても、事故が起きて不毛の地となったり、多くの人が健康の害を受けるよりはましです。ときどき日本から来た方の通訳をドイツでするのですが、日本のビジネスマンは「日本経済のためにはやっぱり原発は必要だ」という人が思いのほか多いので、びっくりします。

また「自然エネルギーのせいで電気代が高い」というのも一概にはいえません。説明すると長くなるので、省きますが。

この夏、福島を訪ねたそうですが、なにか印象に残ったことはありますか?

ドイツにいると、日本での「福島の生産物を食べて応援しよう」というキャンペーンはまったく理解できませんでした。けれど、福島に行って初めて、そこに住む人たちの状況、葛藤が真に理解できた気がします。

「安全だから大丈夫。われわれは風評被害にあっている」と信じている人、「危険だといわれても、ここで生きていかないといけないんだ」という人など、福島にはさまざまな人がいることがわかりました。問題は、どれが正しいかなのではなくて、人それぞれ意見が違うことにより家族や友人が分断されてしまうということ。ひとつひとつの何気ない日常生活の場面で、いちいち選択を迫られることがずっと続くこと。その負担が大きく、大変なのだと思いました。

私の住む北ドイツのハノーファーは広島市と姉妹提携しており、8月6日にはハノーファー市役所で被曝者を追悼する催しをしたり、広島から子どもたちがやってくるなど交流があります。関心の高いドイツ人も多いです。ハノーファーで、福島のことをもっと知ってもらおうというイベントがあるのですが、そこで福島のことを話す予定です。多くの人に日本人の置かれた状況を知ってもらうとともに、福島でのできごとが風化しないよう忘れられないようにしたいと思っています。

おかげさまで『市民がつくった電力会社~ドイツ、シェーナウの草の根エネルギー革命』は、増刷が決まりました。多くの方に読んでいただいて、心よりうれしく思っています。シェーナウを参考に、日本でも普通の市民の活動が、世の中によい影響を与えること願っています。ありがとうございました。

いろんな情報が交錯してはいますが、現場で「感じること」から見えることも多いのでしょうね。

そして、ご著作、早くも増刷決定とはおめでとうございます。良い本なので、もっともっと多くの方に読んでほしいと思います。ハノーファーで福島のことを伝える活動も頑張って下さい。

そして、理穂さん、今後も「地球はとっても丸い」にハノーファー発で、エコにまつわる連載を寄稿して下さるとのこと、楽しみにしています。

『市民がつくった電力会社~ドイツ、シェーナウの草の根エネルギー革命』

http://mediahiroba.com/wp-content/uploads/riho_hito_eye-490x225.jpghttp://mediahiroba.com/wp-content/uploads/riho_hito_eye-490x225-150x150.jpgyahoiひと・人@広場今回の「ひと・人@広場」はこのたび『市民がつくった電力会社~ドイツ、シェーナウの草の根エネルギー革命』を書かれた、ドイツ・ハノーファー在住の田口理穂さんです。 田口理穂さん(左)とウルズラ・スラーデクさん(右) 【やほい】 このたびは今の日本に“必要な本”の執筆お疲れさまでした。広場では原発事故以来、いろんな情報交換がなされましたが、なかでもシェーナウ電力会社発行の「原発に反対する100個のじゅうぶんな理由」を理穂さんに教えていただいたときには、これこそ世界じゅうに知らせるべきと思いました。今回それも収録された、シェーナウ電力会社の軌跡を知ることができとても元気が出ました。 簡単に紹介すると、ドイツの小さな地方都市シェーナウに住むスラーデク夫妻は、チェルノブイリの原発事故を目のあたりにし、有志とともに反原発運動をはじめました。運動をすすめるうちに既存の電力市場に疑問を持ち、寄付を募って送電網の買取りに成功。果ては自然エネルギーによる電力会社を作ってしまったという、壮大な実話なのですよね。 スラーデク夫妻の信念に基づいた行動力はまさに、「アッパレ!」としか言いようがありません。とくに、ウルズラ・スラーデクさんの言葉には、わたしたちが確実に受け取るべきメッセージがたくさん詰まっていると感じましたが、取材中に印象に残ったことをお聞かせ願えますか? 【理穂】 最初に同社を訪問したのは、ちょうど10年前でした。スラーデク夫妻をはじめみなさん、生き生きと仕事をしていたのが印象的でした。自分の信念に基づいてやっているから、義務的だったりおなざりだったりしない。「信じるところと、市民活動、経済活動が一致しているのは幸せなこと」といっていましたが、まさにそのとおりだと思いました。困難を可能に変える粘り強さがあり、けれど、楽しみも忘れない。企業としての損得勘定の前に、「原子力のない社会をつくるためには、どうすればいいのか」と考えつつ行動しています。 「信じることと経済活動が一致」というのは理想的ですよね。 最近では、脱原発を学ぶということなのか、ドイツやデンマークに自発的に視察にでかける人々も増えているようですが、脱原発に着々と方向転換しようとしているドイツと、今ひとつ釈然としない日本、両国を知る理穂さんから見て、どんなちがいを感じますか? 日本はドイツの電気代が高いとか、再生可能エネルギー買取法は問題が多いなど、揚げ足を取るような論争ばかりしているような気がします。 ドイツは、福島原発の事故を見て、原発の脅威を感じました。だから脱原発を決めました。これは国民の総意によるものです。あんな事故があったのに、日本でいまだ原発推進派が存在することが信じられません。これからも事故はいつ起こるかしれず、起こればどれだけ致命的なことになるか経験したにもかかわらず・・・。いくら電気代が高くなっても、事故が起きて不毛の地となったり、多くの人が健康の害を受けるよりはましです。ときどき日本から来た方の通訳をドイツでするのですが、日本のビジネスマンは「日本経済のためにはやっぱり原発は必要だ」という人が思いのほか多いので、びっくりします。 また「自然エネルギーのせいで電気代が高い」というのも一概にはいえません。説明すると長くなるので、省きますが。 この夏、福島を訪ねたそうですが、なにか印象に残ったことはありますか? ドイツにいると、日本での「福島の生産物を食べて応援しよう」というキャンペーンはまったく理解できませんでした。けれど、福島に行って初めて、そこに住む人たちの状況、葛藤が真に理解できた気がします。 「安全だから大丈夫。われわれは風評被害にあっている」と信じている人、「危険だといわれても、ここで生きていかないといけないんだ」という人など、福島にはさまざまな人がいることがわかりました。問題は、どれが正しいかなのではなくて、人それぞれ意見が違うことにより家族や友人が分断されてしまうということ。ひとつひとつの何気ない日常生活の場面で、いちいち選択を迫られることがずっと続くこと。その負担が大きく、大変なのだと思いました。 私の住む北ドイツのハノーファーは広島市と姉妹提携しており、8月6日にはハノーファー市役所で被曝者を追悼する催しをしたり、広島から子どもたちがやってくるなど交流があります。関心の高いドイツ人も多いです。ハノーファーで、福島のことをもっと知ってもらおうというイベントがあるのですが、そこで福島のことを話す予定です。多くの人に日本人の置かれた状況を知ってもらうとともに、福島でのできごとが風化しないよう忘れられないようにしたいと思っています。 おかげさまで『市民がつくった電力会社~ドイツ、シェーナウの草の根エネルギー革命』は、増刷が決まりました。多くの方に読んでいただいて、心よりうれしく思っています。シェーナウを参考に、日本でも普通の市民の活動が、世の中によい影響を与えること願っています。ありがとうございました。 いろんな情報が交錯してはいますが、現場で「感じること」から見えることも多いのでしょうね。 そして、ご著作、早くも増刷決定とはおめでとうございます。良い本なので、もっともっと多くの方に読んでほしいと思います。ハノーファーで福島のことを伝える活動も頑張って下さい。 そして、理穂さん、今後も「地球はとっても丸い」にハノーファー発で、エコにまつわる連載を寄稿して下さるとのこと、楽しみにしています。 『市民がつくった電力会社~ドイツ、シェーナウの草の根エネルギー革命』海外事情に詳しい、海外在住のライター、メディア・コーディネーター、フォトグラファー、トランスレーター(通訳、アテンド)を探す、繋がるサイト