10:『免税販売・ショッピングの手引き』発売!/伊藤雅雄さん

menzei_book今回は、英国、ロンドン在住の伊藤雅雄さんが、
『免税販売・ショッピングの手引き』を出版されたときいてお話を伺いました。

『免税販売・ショッピングの手引き インバウンドへのアプローチ』
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【やほい】このたびは『免税販売・ショッピングの手引き』のご出版おめでとうございます。

 タイトルから“免税”という言葉が飛び込んできますが、具体的にはどのような方たちを対象にした手引き書なのでしょうか?また、この本の出版に至った経緯を簡単に教えていただけますか。

【いとう】日本にはもともと外国人や永住者に対する消費税の免税措置、という手続きが存在していたんですが、「そういうことができる」というPRがほとんどされておらず、積極的に免税制度を利用しようという旅行者は非常に少なかったのです。ところが、昨年秋に日本政府が「消耗品を含む、全ての物品に対して消費税を免税とする」という新しいスキームを打ち出しました。その結果、たまたま円安で増加傾向にあった訪日客が競って免税ショッピングを楽しむようになりました。とくに、新たな措置により化粧品や薬品が免税で買えるようになったことは、「良質な日本製」を欲する中華系の人々に大きな後押しとなったようです。

爆買い用に積まれたポッキー?しかし、新しいスキームが導入されたのに、PRの方法が悪いのか、訪日ツアー参加者以外にはほとんど免税ショッピングのルールが知れ渡っていません。まして、在外邦人にこういった情報が伝わることはなく、そういう事実を知る海外在住日本人はほぼ皆無です。そこで、まずは国外に住む100万人以上の日本人に「免税でお得なショッピングができること」を知らせようと、書籍の刊行に踏み切りました。

【やほい】なるほどです。日本で買い物することで「免税」の恩恵が受けられるのは、海外在住者なわけですから、日本の内側の方たちがそのような情報を日本語で、在外邦人に向けて伝えたいと考える人はそうはいないかもしれません。まさに、在外邦人だからこその目の付けどころといえますね。

 わたしもネットで調べてみたのですが、海外在住者への免税措置に関する情報は多少はでてきますが、わかりやすく説明してくれているものは少ないように思います。これも、対象が「海外居住者」と、限られた方たちだからでしょうか? とはいうものの、グローバル時代の昨今ですので、その数はすでに膨大ですよね。では、具体的にどんな人々が免税で買い物できるのか教えて下さい。

【いとう】細かい規定があるにはありますが、大まかに言うと、日本に観光などで「短期滞在」で訪れる外国人と、海外に2年以上在住する(予定の人も含む)日本人が免税ショッピングの対象となります。どこかの国の永住権を持っているかどうか、といった細かい条件はなく、駐在員や留学生でも外国に住んでさえすれば、要件は満たします

実際の手続きでは、外国での居住証明や出国航空券を見せるといった要求はなく、自己申告で済んでしまうのが現状ですね。

【やほい】空港にある免税店とはどうちがうのでしょうか?

【いとう】これは文章を書いている最中にも、どう表現したら分かりやすいか結構悩みました。というのは、このスキームで免税になるのは「消費税」のみ。一方、空港にある「免税店」では酒税やたばこ税、関税などが免税されて安く売っている訳です。英語では前者は「TAX FREE」、後者は「DUTY FREE」と分けられているのですが、日本語では「免税」という単語しかないんです。いちいち消費税免税店、なんて呼ぶ人はいませんし。用語がしっかりしていないから、PRが進まないのかもしれませんね。

【やほい】 “税”とひとくちにいっても、いろんな税があるわけですからね。それでは、どんなものが免税になるのでしょうか。

【いとう】恐ろしいことに、売っているもの全部について消費税が免税となります。買い物額の下限があって、食べ物や化粧品、薬品といった「消耗品」は1つのお店で5,000円以上、「耐久消費財」は同じく10,001円以上にならないと免税手続きをしてもらえません。

なお、「消耗品」は専用の密封袋に入れて渡され、出国まで開けてはいけないことになっています。また、自分がいくら外国に住んでいるからといって、スーパーのお弁当やアイスクリーム、生の肉類など、空港からの持ち出しまでに賞味期限が切れそうなものを免税で買うことはできません。もっとも、出国直前に大量の魚介を買って北海道から出国する、という強者がいるそうですけど。

【やほい】(笑)それはすごい! 免税でお買い物したい場合、どんなところに行けば免税で買えますか?

【いとう】制作作業中に最も多かった質問の1つが「どこの店で免税手続きを受け付けているのか?」というものでした。今回の制作中に、全国にある消費税免税店は13,000店を突破。あっという間に2万店くらいまで増えるかもしれません。調べたところでは、大手スーパーチェーンのイトーヨーカドーとイオンはほぼ全店で免税手続きを受けてくれますから、ご実家が辺鄙な場所にある方でも免税ショッピングが楽しめますよ。

【やほい】諸外国の免税手続きと異なる点はありますか?

【いとう】例えば、欧州から免税品を持ち出す際は空港の税関カウンターに買った商品を見せて、書類にハンコをもらわねばなりません。ところがこの手続きをするのがまた一苦労。なぜなら、欧州にも中国からの「爆買い団」が大勢行っていて、税関は長蛇の列なんです。

日本ではこの税関検査を大幅に簡素化。お店でもらった書類を提出するだけでOKとし、商品を見せる手続きを省略しちゃいました。つまり本当に商品が輸出されたかどうかを税関吏が目で見てチェックしていないのです。こんなんでいいのか、と思ってしまいますが。

【やほい】まだまだ、この制度の各国語による情報整備が待たれるところかもしれませんね。まさに大量購入される人々には、是非とも教えてあげたい内容です。実際のところ、免税ショッピングの現状はどうなのでしょうか?

menzei_service_counter 【いとう】日本で盛んに報道されている「爆買いの中国人」の標的(笑)のひとつは、ドラッグストアなんですが、ツーリストが集まる都心のお店を除いては、手続きに慣れていません。ですから、先にお店の人に「免税手続きをお願いする」という心づもりを伝えてから買い物を始めた方がよさそうです。そうすると慌てて店長を呼びに行ったりしますので。一方、スーパーや家電量販店の場合はそれなりに窓口のスタッフが教育を受けているようで、わりとすんなりと手続きしてくれますね。

【やほい】小売店をはじめ、ビジネスを展開する側からすると、海外から訪れる買い物客に対して、この制度の情報をわかりやすく説明し、簡単に免税で買い物をできるように整備することは、大きな販促に繋がるように思います。

【いとう】今年4月から、複数のテナントが入居するモールやショッピング街でも「合算での免税手続き」を認めるようにルールが変更されました。それ以前は、1つの建物での買い物ならまとめて免税手続きできる場所は百貨店だけでしたからずいぶんシンプルになりました。

さらに、何らかの認証方法を用いて、通信販売でも免税によるショッピングができると時間のない一時帰国者にはとても便利なんですけど、こちらの実現は難しいと思います。

【やほい】在外邦人としては、免税ショッピングに役立つ情報がもっと活発に行き来するようになってくれるいいと思うのですが……

【いとう】最初に述べたように、我々のような国外に住む日本人は100万人以上いますが、華僑のように明確な区画にまとまって住む習慣がないので、「在外邦人向けのお得な情報」をまんべんなく伝えるのがなかなか難しいように思います。とはいえ、あちこちの街には日本語のフリーペーパーがたくさん発行されていますから、そういったソースなどを使って「一時帰国時の便利なTIPS」を告知する方法はないかと思案中です。よく考えるとわたしたちのような在外組が日本に帰ると「インバウンド客」なんですが、観光庁などが取っている統計にはまったく上がって来ません。「在外邦人向けの格安プラン」をつくってくれるホテルや旅館、スーパーとかが出て来たらおもしろいですけどね。

【やほい】たしかにそうですね。海外で暮らすわたしたちのほとんどは帰郷しますしね。

言葉ができないからと、外国人への対応が後回しになっている“フツーの日本人”の方たちにとっては、隠れたビジネスチャンスのヒントがみつけられる一冊かもしれません。

 英国にいながら、日本のインバウンド事業について常に気に留めているいとうさん。現在は「外国人の目から見た日本のインバウンド旅行」に関する書籍も準備中だそうです。

「写真提供:イオン」