11:世界を舞台にWord Connectionを立ち上げ/マイアット・かおりさん

 

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今回ご登場いただくのは、フランス、バスク地方を拠点にご活躍のマイアットかおりさんです。かおりさんは、海外在住メディア広場とはとっても長いお付き合いで、広場の中ではかなり古株さんです。また、広場登録ライターの寄稿で成り立つ媒体、「地球はとっても丸い」でも、長い間、編集スタッフとして、ご尽力下さった方でもあります。

そんなかおりさんが、昨年、ご自身の会社Word Connectionを立ちあげて大成功への道を歩んでおられるとお聞きして、是非お話を伺いたくなり、この場にご登場をお願いしました。

【やほい】
かおりさん、どうぞよろしくお願いします。
まず、かおりさんをご存知ない方のために、簡単にかおりさんの経歴をを伺ってもいいですか?

【かおり】
よろしくお願いします。ご紹介ありがとうございます。そうですね! 地球丸は誕生からの長い付き合いです! 地球丸の編集は子供が幼児だった時からやってましたから、ずいぶん長くかかわっていますね。その子供たちももう高校生です。最近では仕事が多忙で編集部とはご無沙汰になってしまいましたが…。

私は2003年にフランスに家族で移住しました。それ以前は日本で社内翻訳者や新聞社で編集・記者をしながら在宅のフリーランス翻訳がやりたくて、働きながら翻訳をしていました。フランスに来てからは必然的に在宅中心となり、翻訳とその他日本の雑誌に小さな記事などを日本語で書いていました。その後順調に翻訳の仕事が入ってくるようになり、フリーランス翻訳者と公言しても恥ずかしくないような収入も得るようになりました。

【やほい】
そんなかおりさんが、会社経営に転じたきっかけというのはなんだったのでしょうか?

【かおり】
私はフリーランスでは非常に恵まれた方だと思っています。仕事にはほとんど困ることはなく、たくさんのメジャーな会社ともお取引をさせていただいています。ですが個人ではこなせる量に限界があります。量をこなすため、あと事務処理を翻訳と分けるため、そしてより専門的な分野にも対応できるように、2015年1月に翻訳会社ワードコネクションwww.word-connection.fr)を立ち上げました。

hito_kaori_1私が拠点とするヨーロッパは、多言語が密集している地域ならではのテクノロジーがたくさん発達しています。翻訳ツールもその一つです。その翻訳ツールを駆使して複数人でチームワークを組む大型翻訳のマネージメントが私の仕事の主軸です。ユーザーインターフェース、Eラーニング、ウェブサイトなどが主です。エンドユーザーにはINFOR、Microsoft、Pinterest、Line、最近Adobeのチームにも加えてもらいました。

でも、やはり年齢とともに限界を感じてきたのが一番のきっかけです。翻訳は最先端のテクノロジーや知識がないとできません。それを採り入れてパワーがみなぎる若い人たちにはやはりかなわない。いつも若く見てはもらえるんですが….(笑)。また3年前に大きな病気をしたのが一番の転機でした。

【やほい】
病気の時は仕事はどうされたのですか。

【かおり】
急に歩けなくなり、疲れのような症状が出て仕事に集中できなくなりました。全身の関節が痛み、原因不明の微熱が続き、検査に検査を重ねました。その結果数人の医者を転々とし、「全身性エリテマトーデス」という膠原病の一種であることが判明しました。最悪の時には顔にも発疹のようなものができ、疲れで外出はおろかトイレに行くにも困る始末で、もう私は人間として終わりかと思いましたね。病気が原因で鬱のような症状にも悩まされました。

その時に本当に自分の、個人の限界を思い知ったのです。

また、たった一人で日本を離れ在宅で翻訳をやるのはとても孤独です。フランスにはネットワークも何もありませんでした。最初移住した時には恥ずかしながらフランス語もままならず、ネットワークどころではありませんでした。

独りで毎日コンピュータに向かい仕事をしていると人と接する機会が持てず、コミュニケーション能力も下がるし刺激もありません。病気と収入のプレッシャーなどで一時は本当に気が滅入ってどん底状態でした。

【やほい】
地球丸を続けることがたいへんになった時期なのですね。もう病気はよくなられたのですか。

【かおり】
はい、幸いなことに日本では認可されていない薬を長期間服用することでかなり症状は和らぎました。でも完全に治ることはないらしく、今でも慢性的な関節痛はあります。

でもこの病気がきっかけで、自分が翻訳できなくても、自分のところに来る依頼を会社の人たちでこなしていけるようにしようと思ったのです。

【やほい】
災いから這い上がろうとする力が新たなモチベーションになったとはすばらしいですね。それで次にどうつながったのでしょうか。

【かおり】
これが一番のモチベーションでしたが、他にも翻訳プロセスを改善したいという意欲がありましたね。日本語の文章を書くのに校正が何度も必要であるように、翻訳プロセスも翻訳してからそれをどんどん改善していく、または大きなプロジェクトを数人で手掛けた時に、それをよりよいものにしたい、よりよい成果物をしあげたいという気持ちがありました。

また、後継者といいますか、これからフリーで業界を引っ張ってくれる翻訳者や翻訳をこれから始めたい人などにも指導をしていきたいと思うようにもなりました。よい文章を書くのに原文の意味をよく捉えていない人を改善したり、また翻訳の仕事自体は難なくこなせるのになかなか仕事に巡り合えない人と仕事とを結び付けたいと思っています。

【やほい】
これからの活動の予定を教えてください。

hito_kaori_2【かおり】6月に仙台でJAT(日本翻訳協会)の定例I-JET というイベントがあります。そこで翻訳ツールを題目に登壇させていただけることになりました。欧州で使われているメインの翻訳ツールやAPIの紹介とこれからの可能性、弊社でメインツールとして使っているmemoQという翻訳マネジメントツールについての詳細と翻訳に使えるテクニックなどを日本語で伝授したいと思っています。※IJET-27スピーカー(セッションの半分は英語です)

また、今は英国の大学でメンターをしています。翻訳修士を目指す人に業界のことなどを話したり、日本語の翻訳モジュールの翻訳内容の評価と修士論文の評価もしています。英国とフランスの2カ所で翻訳技術トレーニングのミニセッションなども企画しています。

まだまだ小さな会社ですがビジネスモデルとしては優れていると評価され、目下の目標はISOの取得です。

これから会社が軌道に乗って余裕ができたら、ぜひまた地球丸で編集のお手伝いができる日がくればと思っています。きっとそのころは子供たちが会社を経営していたりして?!

【やほい】
お子さんたちも手伝えるようになったらほんとにすばらしい! 会社経営者としてたいへんなこともあるかと思いますが、いろんな目標に向かって進んでいけるってこれからが楽しみですね。最後にここであらためて、ワードコネクションの宣伝しちゃって下さい。日本の皆さんに対しては、具体的にどういったサービスを提供できるのでしょうか?

【かおり】
こんな機会を与えていただいて本当に感激です。私たちのお客様は日本に進出したい欧州企業、またはグローバル展開したい日本企業です。現在のところ日本企業は地元新潟をはじめ東京の企業からも引き合いが来るようになりました。得意としているのは大規模翻訳のコーディネートです。数名の翻訳者がいなければまとめられない数万から数十万ワードの翻訳が必要とされるローカライゼーションプロジェクトを、適切な人材とツールを手配しながらトータルにまとめます。

ですが小さなプロジェクトでも翻訳ならどんな言語でも可能です。特にGoogleなどの機械翻訳では理解することも不可能な、高いクオリティに仕上げる必要のある専門文書やウェブサイトなどの翻訳が得意です。南西欧から東欧を含む欧州言語はロシアの希少言語を含め、ほとんどすべてを網羅しています。いずれの言語でも大型プロジェクトに対応できます。

現在多く引き受けているのはプロプライエタリ・システムやアプリケーションなどのローカライゼーションです。中心となっている言語はもちろん英日翻訳ですが、日本企業からはフランス語、英語、スペイン語、ドイツ語などへの翻訳が人気です。

最近では日本政府関係の翻訳も担当させていただけました。大型の翻訳または専門文書やソフトウェア・システムの翻訳が必要な場合はお気軽に info@word-connection.fr までご連絡ください。

【やほい】
今後ますますのご発展を期待しています。今日はどうもありがとうございました。