『遊牧夫婦(はじまりの日々)』角川文庫バージョンも読んでみました。

近藤雄生さんの遊牧シリーズ三部作『遊牧夫婦』『中国でお尻を手術』『終わりなき旅の終わり』の中で、最初の1冊『遊牧夫婦』が角川文庫より文庫化されています。シリーズ全編をすでに読んでいますが、わたしはどれも大ファンです。何をかくそう、彼らが夫婦で旅をしているときから、リアルタイムでブログを読んでいました。

ルポライターを目指して世界を旅をしながら新婚生活を営むという、突拍子もない夫婦形態を当時から楽しんでいた者として、書籍化されたときにはわたしまでうれしくて興奮したことを覚えています。

つい先日、その彼と京都で密会(?!)に成功。けっこう赤裸々に綴られている文章を覗き見してきたからか、彼の過去を知っているような錯覚に陥り、とても初対面とは思えない感覚でした。

今回久々に文庫本となった『遊牧夫婦』懐かしみながら再読。本の中にはいろんなメッセージが散りばめられていて読めば読むほどいい本だと思いました。もちろん、メッセージと捉えるかどうかは人それぞれですが……。

若い夫婦が未来を恐れず、夢と希望を持って旅を続ける姿につい声援を送りたくなるのです。日常の中でフツウに起こってしまう夫婦喧嘩までも素直に描写されているので、きれい事ばかりを書いていないところに親近感も覚えます。そして些細なことを敢えて描写する部分に、近藤さんの感性の鋭さを感じます。見たこと、起こったことを自分なりに分析する能力に長けた方だと思います。「事実は小説より奇なり」と言いますが、旅で出会う人びとがまるでフィクションと思うほど、ドラマティックに描かれているのも読み応えのあるところです。

おもしろい人々との出会いを求めて旅を続ける夫婦。旅の情景、国を移動するたびに驚くほど価値観が変わることなどを追跡していく過程で、世界が広く、闇と希望と理解し合うことが簡単ではない現実が存在することを疑似体験させてくれます。読むたび、映像化されたらおもしろいのになぁ(ロケにお金かかりそうではあるけど)と思っています