『質素であることは自由であること』(有川真由美著)を読んで
これぞ広場の有効利用?
広場の管理人としてとってもうれしいことがあります。それはこの本が世に生まれるにあたっての影の立役者、アルゼンチンの相川知子さんの存在と連携です。
今やベストセラー作家となり大活躍している有川真由美さんが「海外在住メディア広場」に登録されたのはまだ1冊の著作もお持ちではなかった十数年も前のこと。数々の仕事を転々としたあとギリシャに潜伏中(?)のときでした。そのあたりのことは2011年に「ひと・人@広場」でお話下さっています。
ギリシャを後にしてから広場の中でたまたまみつけたチャンスと縁が、彼女の努力によってどんどん功を奏し、気づけばあれよあれよという間にベストセラー作家となったわけです。もちろん、「あれよあれよ」と見えるだけで、これほどのペースで次々と売れる本を書き続けるのは、類稀な才能と、弛まぬ努力の賜物にちがいないわけですが、遠巻きながらも、過程を知る者として感じるのは、有川真由美さんはチャンスや縁を見逃さない天才ということです。
『質素であることは自由であること』をご覧になっていない方のために少し説明します。
有川真由美さんは「世界一質素な大統領」として世界的に脚光を浴びたウルグアイのムヒカ前大統領のスピーチに感銘を受けました。そのムヒカさんの取材コーディネートや通訳などの仕事を通してムヒカさんとコネクションのある相川知子さんとは広場を通じての仲間です。真由美さんは、ムヒカ夫妻を知る相川知子さんの言葉「ルシアさんの生き方は、世界中の女性にとって刺激になると思うんだけど」を聞き逃しませんでした。働く女性を元気にするために日々書き続けている有川真由美さんを理解している知子さんだからこそ、真由美さんに発した言葉だったのだと思います。
そしてルシアさんに惹かれていった真由美さんは「いつかルシアさんに会うことがあるだろう」と確信してしまうのです。ここで“確信”に至ってしまうあたりが彼女の才能と情熱と言わざるをえません。だって、言葉もわからないでしょうし、ウルグアイですもの。
結果的に「確信さえすれば実現できる」という展開にわたしは心から感服しました。
そして、“確信”という気持ちを「待ってました」とばかりに、相川知子さんとその家族が実現のために動きこのすばらしい本が誕生したわけです。
ルシアさんの言葉に惹き込まれる以前の冒頭部分で、わたしはかなり感動してしまいました。
今、ちょっとシンドイと感じている人には是非読んでほしい1冊
さて、『質素であることは自由であること』というタイトルを見たとき、その昔、中野孝次さんの『清貧の思想』を読んだことを思い出しました。
行き過ぎた市場原理主義に異を唱えるように、経済的利益ばかりを追い求めて、生きるためにたいせつなことを二の次にして拝金主義に走った時代のあとで大流行した本でした。当時わたしは家族で田舎暮らしを楽しんでいたころで、あちこち読み返しては深く頷いたものです。その後さらなるシンプルライフを求めて南の島サモアに移住したときには、 “質素ゆえの自由”を実体験として思い知りました。この本を読み、ルシアさんやムヒカさんの言葉を聞いていると、わたしにとっては、サモア時代に聞いた言葉や経験があちこちでオーバーラップするおもしろい読書となりました。経済的には決して豊かではない国で、人と人との繋がりや、自然と共生する生き方や、お金がいちばんではない価値観から生まれるライフスタイルに共通するところがあるからかもしれません。
そして、第三章、四章、五章と読み進むと、どの章にも惹き込まれます。
譲り合うことのたいせつさ、家族やパートナーとお互いに尊敬しあい、健全な関係を築いていくことの重要性、自分を知り自分をたいせつにすること、自分に正直に生きることで、人生を楽しみながら闘っていけるということがルシアさんの愛情のこもった言葉で語られます。それが真由美さんのフィルターを通してさらに心に染みる文章が上乗せされていきます。
とにかく、深く共感できました。実践することは簡単なようで難しいことでもありますが、わたし自身、これからも肝に銘じていたいと思うことばかりで読んで良かったと思える本でした。