『フランス人の性 を読んで』(プラド夏樹著)

帯には衝撃的な言葉が並ぶ。

『フランス人の性  なぜ「#MeToo」への反対が起きたのか 』 プラド・ 夏樹  (著) (光文社新書)  

在仏歴30年の日本人、プラド・夏樹さんがフランスで体験、垣間見た性にまつわるあれこれを鋭い観察眼で考察しています。経験だけでなく、歴史を紐解きながらことの背景を探ったり専門家の意見を聞いたりしながら、彼女なりに分析しているところが読み物としてもかなりおもしろいです。

日本で生まれ育つもフランスでオトナのオンナになった彼女ならではの視点が、両国間のちがいを浮き彫りにしてくれます。タイトルから想像すると、「なんだフランスのことか……よその国のことなんかどうでもいい」そう思われるかもしれませんが、この本は日本人だからこそ読んで損はないと感じました。受け止め方は各々でしょうが、よそを知ることからそれぞれの「目からウロコ」が見つかるのではないでしょうか?!

特に、各環境においての性教育の在り方や姿勢。社会での性に対しての意識や感覚など、両国とも歴史とともに変化してきたこともよく見えてきます。現代の日本のそれが“正しい”わけではありません。そもそも、性的な話題には閉鎖的なのに性風俗営業はお盛ん?!それでもって夫婦やカップルはセックスレスが急増中でますます少子化も進む(もちろんいろんな理由がありますが)日本ですから、今何かを改めるためにも性をタブー視している場合ではないと強く感じます。その意味では国力を高める方法を模索している政治家たちにも是非読んでほしい一冊と言えます。

フランスではセックスレスのカップルは1.9パーセント。一方、日本は44.6パーセントというのだから、その大差に驚きます。日本では半数近いカップルがないのだから、うちも普通でよかった!と考える人も多いのでしょう。繋がり方の形は本人同士が満足、納得しているのならどうでもいいともいえますが、両国の興味深いデータとともに夫婦やカップルの関係性のちがいが見えてくると、「いや、ちょっと待てよ」という気にさせられます。

より豊かな人生を営むために、性を疎かにしないこと、性別を問わず、生物として性はたいせつなことと認識を改めることができれば、自ずと自尊心を高めることにも繋がるのではないでしょうか。また自分の欲望を認め伝えることから、相手の欲望もレスペクトでき、日本でありがちな男性支配主義的な性の在り方からも脱出できるのでは? なにより性を楽しみ、育てながら歳を重ねていくのも生物としての特権かもしれない……なんてことまで考える機会を与えてくれました。 

人生百年時代、高齢者がいつまでも心身ともに健康で仲良く暮らすためにも、フランス流に学ぶことは多いと思え、個人的には、いろんな場面で苦笑しつつ、いくつもの有意義なメッセージを受け取ることができました。まさに性は「生きる心」と書きますがそれに納得です!

とにかく、読むことで「わたしの性」を考えるきっかけとなる本なので、夫婦でカップルで読めば、これからの生き方に大きな変化が生まれる可能性もあるかもしれませんよ。