日本の夫婦別姓問題よ!!前進求む。

夫婦別姓 ──家族と多様性の各国事情 (ちくま新書)

この本誕生により、日本の夫婦別姓問題が前に進み始める予感がする

夫婦別姓 ──家族と多様性の各国事情』(ちくま新書)

ベルギー・栗田路子、フランス・プラド夏樹、イギリス・冨久岡 ナヲ、ドイツ・田口理穂、米国・片瀬ケイ、中国・斎藤淳子、韓国・伊東順子(著)

夫婦、家族にとっての姓のあり方について多角的に考えさせてくれる本が生まれた。執筆陣の多くは当サイトお馴染みの面々ということはさておいて、『姓』を語るなら必ず読んでほしいと思わせてくれた。各国のお国柄もよく出ていて、読み物としても単純におもしろい。

書いているのは、英国、フランス、ドイツ、ベルギー、米国、中国、韓国に在住であり、現地の肌感覚が伝わってくる。歴史的な背景や歩みと共に各々の国の姓にまつわるエピソードや人々の捉え方、受け止め方、現況などをリポートしつつ、そちら側からの日本の現況に対する見え方も散りばめられている。

夫婦別姓問題に関しては、高齢化ばかりが進む日本においては、「自分には関係ない」というのが多数派なのかもしれないが、現実には選択的夫婦別姓が可能となれば、救われる人やより生きやすい人が多くなるのも現実なのではないだろうか。

そもそも、過程はともかく、今や世界では自身の姓を誰もが自分で決められるという自由を手にしているというのに、進むことを拒み続けている日本だけが、「世界のあたりまえ」から置いていかれる結果となっている。進むことで誰が困るのだろう?変えたくない人は変わらなければいいだけのことなのに。一部の国粋主義で拘りの強い権力者が立ちはだかっている現実により、多くの人が救われないまま、また国家としてもより多様性を認めたり、前に進めるはずのことが進められない状況を作り出している日本。

この書の中では各国が、現在の姓にまつわる制度をどう改正してきたかわかりやすく書かれている。そこから、これまでの女性の扱い方が浮き彫りになっているのも興味深い。どこの国もそれぞれのカタチの男尊女卑から脱却して、より女性が人として生きやすい社会を勝ち取ろうと努力してきたことが伝わってくる。

特に中国や韓国の両国はおもしろい。お隣でありながら知らなかったことばかりだ。タイトルは『夫婦別姓』となっているが、まさにフェミニズム同様、世界の女性の権利がどう変成を遂げ、さらにどう将来を見据えているのかを考えさせてくれる。

別姓問題を考えるうえで大いに参考になる、目からウロコな視点を提示してくれる一冊。本を読めば日本の停滞、衰退ぶりがよくわかるだろう。それを認識するためにも、前に進めるためにも、まずは知ることから始まってほしい。